政策

前田武志・国土交通大臣と政策を語る 第1回 三井不動産会長・岩沙弘道氏②

■不動産投資市場について 社会的使命と役割

前田大臣 我が国の不動産は、企業の経済活動や国民の生活に必要不可欠な資産として、我が国の成長を支えるとともに着実にそのストックを積み上げてきたところですが、老朽化・遊休化が進んでおり、低炭素・循環型社会の構築の観点や、生活環境・防災性の向上、産業構造の転換、国際競争力の強化による都市再生の観点からも、約2200兆円に及ぶ不動産資産の再生・有効活用が必要となっています。

 一方、国内外の民間資金は、世界的に景気が低迷する中、様々な運用先を求めています。Jリートに代表される不動産投資市場は、これらの橋渡しをする重要な役割を担っており、マーケットメカニズムを活用した不動産への投資を促進することが必要です。

岩沙会長 Jリートは、今年で10周年を迎えました。2銘柄、運用資産約3200億円(01年9月末)でスタートし、現在では34銘柄、8兆2000億円を超える資産を運用するまでに成長しました。

 Jリートは、分配金も累計で1兆2000億円を超えており、オフィスビルや賃貸住宅等の安定的な賃料に裏打ちされた配当が評価されて国民の資産形成の役割を果たしてきました。

 また、個人金融資産を不動産投資市場に投資いただき、大都市の再生や地域活性化に生かしてきました。

 一方、私募ファンドにおいては、長期にわたり安定的に運用したいという企業年金等の投資家のニーズに応えてきました。今後は非上場オープン・エンド型不動産投資法人の創設など、投資家の幅広いニーズに応えていきます。

■規模拡大の重要性

前田大臣 厳しい財政状況の中で、我が国の経済の活性化を図るには、都市再生など経済波及効果の高い分野に民間資金を振り向けていく必要があり、不動産投資市場の規模の拡大は大変重要な課題であると考えます。

 そのためには、不動産単体に止まらず都市全体の成長性や魅力の向上、投資を促す規制緩和、国内外の投資家への幅広い普及活動等を通じ、投資家の投資意欲を一層高めていく必要があります。

 一方、都市は、環境負荷、国際競争力、防災安全性といった課題を抱えており、公的施設の整備と並行して、民間資金を導入するための市場整備や誘導措置を講ずることにより、官民協力して効率的な都市空間の整備を進め、地域の集約化やミッシングリンクの解消などを促進し、都市機能の向上を実現していく必要があります。

 そこで、公共施設の整備にPPPやPFIなどの活用を促進するとともに、老朽化・遊休化した不動産の再生をSPCを用いて行うことができるよう不動産特定共同事業法の規制緩和を行うほか、病院、介護施設等の公益的施設の機能向上に不動産証券化手法の活用を検討することなどに取り組んでいきます。また、Jリートについては、保有不動産の売却代金を使って優良な不動産を取得できるような税制改正や、投資法人法制の見直しに向けて、金融庁などと連携していきます。

岩沙会長 Jリートの更なる成長のため、時価総額をできるだけ早い時期に10兆円まで拡大させたいと考えています。そのためには次の3点が重要です。

 1点目は、投資適格不動産の拡大。ヘルスケア施設を加えるなど投資対象資産の用途の多様化や、PFIやPPPの活用により公的施設を投資対象資産に加えることです。
 2点目は、投資家層の拡大です。賃料にもとづく安定的な利回りという商品特性をご理解いただき、公的年金を含む年金や、より多くの個人投資家に投資いただきたいと思っています。
 3点目は、市場基盤となる制度の整備。Jリートがアジアの他のリート市場との競争に打ち勝つためには、資金調達手法の多様化など、国際的なイコールフッティングが重要です。不動産証券化協会としては、金融庁が平成25年度に予定している投資法人規制の見直しに向けて、関係機関と協議していきます。