不動産キャリア 新しい地図 ― 未来を描く7つの指針 ― 第4回
AIが台頭し、社会構造が変わりゆく中で、不動産業界に求められる人材像も大きく変化しています。単なる「資格保持者」ではなく、時代の変化を読み解き、顧客の人生に寄り添える真のプロフェッショナルへ。
本連載は、不確実な未来を乗り越えるための「新しい地図」。全7回で、あなたのキャリアデザインをサポートします。
不動産ライター 大槻一敬
デジタルマーケティング×不動産 ~顧客との新しい接点創造~
不動産業界では、かつて「立地」と「人脈」が営業の要とされてきました。しかし、コロナ禍を経て顧客接点のデジタル化が急速に進み、今やデジタル上での信頼構築こそが最大の競争力になりつつあります。SNS・VR・Web広告などを駆使して、顧客の関心を的確に捉え、最適なタイミングで情報を届けることが求められています。本稿では、デジタル技術を活用した不動産営業の新潮流を解説します。

1.SNSで築く「信頼の可視化」
InstagramやTikTokなどのSNSは、単なる集客ツールではなく、不動産会社の“人となり”を伝えるメディアとして機能します。施工事例や物件紹介動画だけでなく、社員のストーリーや地域密着の活動を発信することで、「安心できる会社」「相談しやすい担当者」といったブランドイメージを構築できます。また、コメントやDMを通じたリアルタイムのやり取りは、顧客との心理的距離を縮める“デジタル接客”としての役割を果たします。投稿データを分析し、反応の高いテーマを抽出すれば、次の企画や広告にも反映可能です。
2.VR・ARが変える内見体験
VR(仮想現実)やAR(拡張現実)は、物件を「体験」させる新たな営業手法として急速に普及しています。来店せずに室内の広さや日当たりを体感できるVR内見は、遠方在住の購入検討者や海外投資家にとって大きな魅力です。また、ARを活用すれば、スマートフォンの画面上で家具の配置を試したり、リノベーション後の完成イメージを可視化したりと、「購入後の暮らし」を想像させる提案が可能になります。これにより、従来の「物件説明型」営業から、「体験共感型」営業へとシフトし、成約率の向上にも寄与します。
3.Web解析で“顧客の今”を読む
デジタルマーケティングの核となるのが、Web解析です。アクセス解析ツール(例:Google Analytics、Search Console)を用いれば、ユーザーが「どのページを見て離脱したのか」「どの物件写真に長く滞在したのか」といった具体的な行動を可視化できます。これにより、単なる勘や経験ではなく、データに基づく“顧客理解”が可能になります。たとえば、ファミリー層の閲覧時間帯やデバイス利用傾向を分析し、最適な時間に広告を配信するなど、効率的なマーケティング戦略を立てられます。
4.デジタル広告運用スキルの必要性
SNS広告、リスティング広告、動画広告など、オンライン広告の多様化に伴い、不動産営業担当者にも広告運用のリテラシーが求められています。特に、ターゲット設定(年齢・地域・興味関心)やABテストの運用、広告文・クリエイティブの最適化といった要素は、反響率を大きく左右します。広告代理店任せにせず、自社で数値を分析し改善を回す「PDCAの内製化」が進むことで、より精緻な見込み顧客育成が実現します。
※第5回「資産価値向上のスペシャリストへ多様化するニーズへの対応力が信頼を生む~」 12月上旬公開予定








