売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(45) ~畑中学 取引実践ポイント~  プロなら高く売る提案 売主との対話と見せ方「価格査定(2)」

 前回までに(1)机上査定、(2)現地査定と述べたので、今回は(3)売主との対話、見せ方の話になる。ポイントは「売主が期待(想定)していることを読み取り、それに対応できるようにする」だろう。

 理由はそうしないと「期待と違っていたので、他の不動産会社にも会ってみよう」と売主の納得が得られず、査定報告の先にある媒介契約につながらないからだ。なお、期待していることは、(1)不動産をプロの視点で査定してもらいたい、(2)売主である自分に分かりやすいよう説明してもらいたい、(3)高く売るための提案が欲しい、主にこの3点だろう。現地査定が終わった後は、作成した査定書を持って売主に会い査定結果を報告していくことになるが、査定書がこの(1)(2)(3)から外れて作成されていると、今一つ納得が得られず媒介契約まで進まないことが多い。また、売主との対話、見せ方でもこの(1)(2)(3)は必須となる。

 不動産をプロの視点で査定してもらいたいのは当然だ。売主はネットを見てある程度の相場感を持っているが、それが正しいのかが分からないからだ。そのため「このエリアは4LDKを希望している買主が多いのでこの価格なら成約まで早いでしょう」とか、「今市況的に高めに売り出しても成約になる可能性がある。実際に〇〇という事例がある」、「建ぺい率が超過しているので、買主がローンをスムーズに組めないかもしれないので多少減額して売り出しをした方が良い」など、買主目線や相場感、法令上の制限など知りたがっている。また、建物をしっかり見ることも大事だ。「床のフローリング割れているので補修が必要ですね」など簡単なものから、「基礎にクラックがあるのでそれを埋めてから販売した方が買主は購入を決めやすい」など、インスペクション(建物状況調査)に近い話を交えてするとやはりプロに見てもらって良かったとなりやすいだろう。

 (2)売主である自分に分かり易いよう説明してもらいたいという希望もある。売主には不動産会社に「いいように扱われるのでは?」という警戒感がある。そのため分かりづらい専門用語や数字の羅列は厳禁で、反対に理解しやすい実際の事例や成約事例などを豊富に利用して説明と、査定書を作成した方が良いだろう。売主に「このような理由でこの価格になる」と納得が得られて、安心して販売まで進められるだろう。

 (3)高く売るための提案も欲しい。安く売りたい売主はほぼ皆無であり、プロに求めていることは「いかに高く売ってくれるか」だからだ。査定書や説明で「〇〇という条件を満たしてから売却すると高く売れる」と伝えると喜んでもらえるだろう。

 以上、3回に分けて価格査定について述べてきたが、総論としては査定とは売主が納得するポイントを探すことだと思う。そこを意識して活動していきたい。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。