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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇100 シリーズ その想い、本当ですか 価値住宅の高橋正典社長に聞く 「住宅は住み始めてからが本番」

 建てては壊すビジネスを繰り返し、新規顧客ばかりを追い求めた結果……我が業界は時代とお客様に取り残されました。〝我々は、選ばれるサービスを提供しなければならない〟〝我々は選ばれる企業にならなければならない〟。だから私共は業界初の「完全エージェント型」にこだわります。かつて誰もが触れることのなかったタブーに挑み、お客様メリットの最大化を実現するべく、先頭に立ち汗を流します。スタッフ一同、ここに一人ひとりのお客様の為の、最良エージェントとして、できる限りのお力添えをお約束致します。

 ――これは貴社の板橋店HPに掲載されている「運営方針・想い」です。お題目を並べただけの企業理念が多い中で、本音と誠実さが伝わってきます。でも、業界のタブーに挑むのは大変なことでは。

「昔はそうでした。でも今はお客様に真に選ばれるサービスを提供することができれば、十分ビジネスができる時代です」

 ――エージェント制にこだわる理由は。

 「米国の不動産営業マンは会社に帰属するのではなく、独立したエージェンント制で、経験を積むとそれが実績となり、収入に結び付くというシステムになっています。つまり、不動産取引の中で〝ひと〟そのものが評価され、長くキャリアを積むほど顧客に信頼され、その人のキャリアが市場で高く評価される仕組みになっています。日本も今、ようやくそうした方向に動き始めたと思います。

 ――エージェント制に移行して初めてそこにコンサルティングが生まれるのでは。

 「その通り。そもそも不動産営業は〝コンサル〟が基本。私もコンサル資格(公認不動産コンサルティングマスター)を取りました。コンサルは依頼者の立場になって、依頼者の利益を守るのが仕事です。エージェント制は我が国の不動産業界にコンサルティングを根付かせるために必須の制度です。

 ――価値住宅本社HPの企業理念には、こうあります。

 住宅ストックが充足した我が国において、これからの住まいは「消費財」から「資産」へとその価値観を変えていきます。かつての〝住宅購入がゴール〟の住宅すごろくから、適切な維持管理やリフォームの実施によりその価値が低下することなく、継承そして流通する新たな〝住宅循環システム〟の構築に取り組みます。

 ――まさに売買契約後にこそ、貴社の本当の役割があると。

 「当社では、〝脱・手離れの良さ〟を掲げています。〝売ったらそこで終わり〟では、不動産のプロとして顧客に対し不誠実と考えるからです。なぜなら、お客様にとっては、購入したときがスタートで、そこから新しい暮らしが始まるわけですから。お客様が家を購入したあとも、当社はその住宅管理会社として、資産価値の維持・向上サービスを提供していきます。分譲会社は義務がありますから当然ですが、当社は仲介という立場でもその住まいを管理していきます。

 ――具体的には。

 「定期的な建物のインスペクション、住宅履歴情報の整備、定期管理報告書を送付、10年間・24時間緊急駆け付けコールセンターの4つです。もちろん、このサービスを受けるかどうかはお客様の任意です。ちなみに代金は毎月500円です」

 ――〝生涯顧客化〟ということが不動産業界でも言われ始めました。

 「お客様を長く囲い込んで、儲けるということではありません。我々はむしろ扱った住宅そのものに生涯関わり続けて、その資産価値を維持し、維持した資産価値を正しく評価する市場をつくることが目標です。個人にとって大切な住宅は、本来なら米国のように取引されるごとにその資産価値を高めていくのが理想ですが、人口減少が続く日本では難しいでしょう。ですから、せめて資産価値を落とさないためのサービスを提供し、経年に左右されない日本に新たな住宅循環システムを作り上げる。それがわが社のミッションです」