前回に続いて残金決済・所有権移転登記・引き渡し(以下、残金決済等)の後半となる。前回は、(6)売主の着金確認までなので、今回は(7)領収書の交付からだ。なお、ここまでくれば残金決済等の業務の大半は終わっているが、最後まで気を抜かず手続きをしていきたい。
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(7)領収書等の交付は、売主の着金確認後に売主から買主へ残代金や固定資産税等の清算書を交付することだ。売主に領収書へ署名捺印をもらい買主へ交付する。ただ、残代金等の領収書のコピーについては司法書士が登記手続き上、私たちも取引の確認上保管が必要となるので、金融機関の担当者にコピーを依頼するか、近くのコンビニでコピーをしておこう。なお、領収書等は売主から買主へ手渡しをしてもらうと取引が終わった感が出てセレモニー的に良いだろう。
(8)諸経費の清算(仲介手数料の支払い)は何に幾ら支払うのかを明細を見せながら清算をしてもらう。売主・買主とも仲介手数料、登記費用の2つが主な精算項目で、他には火災保険料、測量費用などとなる。現金で持参いただくか、金融機関の窓口で出金か振り込みで対応してもらう。 これらの領収書は残代金等の領収書と一緒にファイリングしてもらう。譲渡所得税等の税金申告時に経費扱いとするための証拠書類となるからだ。紛失してしまうと税務署が認めないこともあるため、重要書類であることを口頭で伝えて一緒にファイリングするのでも良いだろう。
建物がある場合は、(9)鍵を含めた物件の引き渡しを行う。鍵はどこの箇所で使う鍵かを売主から説明してもらいながら買主へ交付する。本数とキーナンバーについては、引き渡し完了確認書に記載欄がある場合はそこに控えておこう。
なお、その際だが物置や車庫、ポスト、宅配ボックスなどの鍵や暗証番号は買主へ交付や伝えることを失念しやすい。売主も忘れてしまうことが多いため、事前に案内するとともに暗証番号は売主の引っ越し後の室内外確認時にヒアリングして本当に開くか試しておこう。引き渡し後に買主から「聞いていた暗証番号で開かない」という問い合わせは意外に多いので注意したい。
最後は、(10)物件資料の授受となる。建築確認通知証、検査済証、確定測量図、パンフレット、管理規約など物件の重要書類を売主から買主へ交付してもらう。紛失しているようなら致し方がないが、できるだけ交付してもらおう。
これらが終われば「こちらで取引は終わりとなります。おめでとうございました」と残金決済等を解散とする。
売主、買主ともに気持ち良く取引が終わったと感じてもらえる終わり方をしたい。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。