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大言小語 解体か利活用か

 自宅の近所にある水道局宿舎だった2棟建て低層マンションの解体撤去工事が続いている。入居者の退室に数年を費やし、昨年ようやく解体を着工した。建物の完成年は分からないが、幼少の頃の記憶をたどってみてもおそらく半世紀は経つだろう。広い敷地に隣接している道路の拡幅延長工事も同時に進められており、完了後はどのような土地利用になるのかがご近所さんたちの関心事だ。

 ▼解体工事が進む宿舎の隣地には高さ約30メートル、直径約18メートルの元配水塔がそびえたっている。円柱形の胴体にお椀をひっくり返したようなドーム型の屋根という独特の外観で、長年、水道タンクの愛称で呼ばれてきた。こちらは昭和4年に完成し、同41年まで配水塔として使用されていたという。現在は敷地一帯が公園として整備されており、地元の災害用給水槽としても活用され続けている。昭和41年に使用が停止されてからしばらくの間は整備もままならなかったようで廃虚同然、宿舎と同様に当時の子供たちの遊び場でしかなかった。

 ▼この水道タンクは取り壊すことなく災害用給水槽としての役割が延長され、最近、大規模修繕を終えた。化粧をしたかのように外観の見栄えもよくなった。地域版ランドマークの存在感も醸しだしている。「解体か利活用か」は空き家問題でもよく耳にする。その命運を握るのはやはり人心によるところが大きいような気がしてならない。