総合 売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(26) ~畑中学 取引実践ポイント~ 勘違いさせない引き渡しを「物件状況等報告書と設備表の確認」

 売買契約時には物件状況等報告書、設備表の2つの書類確認がある。別名で告知書とも言うが、物件状況等報告書は周辺の状況や雨漏りや過去の火災、シロアリの害など売主しか知らない建物内外の状況を明示する書類だ。設備表はキッチンや浴室、洗面台といった主要設備の故障等の有無や、動産の処分について明示する種類だ。

 これら書類に書かれた内容が契約条件となる。たとえば、物件状況等報告書で「過去に雨漏りがあって修繕をした」という記述があれば、それは買主も承知していたことになるので、昔の雨漏り痕があっても問題にすることができない。

 また、設備表で「エアコンがある」と書かれているなら、それは不動産と一緒に引き渡すことを意味する。なので、売主が引っ越しの際に撤去してしまうと買主から「エアコンの引き渡しをしてほしい」と言われても逆らえない。よくある勘違いだが、今現在エアコンがあるからと言って「有」にチェックしてもらうのではなく、置いていくなら「有」、撤去していくなら「無」と書いてもらうようにすることだ。そのため、「設備表を書いておいてください」と単に書類を渡すだけでは難しい。売主が「今あるものと状況を書こう」と勘違いして書いてしまうかもしれない。そうならないように(1)記載内容で引き渡しを行う、と書類の意味をしっかり説明して手渡すか、(2)不動産を見ながら一緒に書いていく、どちらかの対応が必要だ。

 なお、売主に書いてもらう時期は売買契約前が多いが、できれば売却の媒介契約前後で書いてもらった方が何かとよい。

 理由は、(1)買主に周辺状況や設備状況を案内時に伝えられる、(2)自分(営業担当者)が不動産の状況を正しく把握できる、ためだ。問題点があるなら売買契約が決まるまでに解消できるかもしれない。また、周辺に忌避施設がある、設備で故障があるなら購入検討者に案内時に伝えておくことで余計なトラブルを避けることができる。

 この説明がなく、売買契約時に物件周辺状況等施設に忌避施設があることが書かれていたら、買主から「こんな重要なことを事前に言ってくれなかったのか」「隠して購入させようとした」と買主の信頼を失うことになる。場合によっては売買契約が流れても不思議はない。売主へ事前に「周辺状況等や設備等で問題がない」とヒアリングをして大丈夫と自信がない限りは、媒介契約前後か案内が入る前、遅くとも購入申込書を受け取る前には2つの書類の記入を終わらせて把握しておきたい。

 また、売主の勘違いによる記入があるかもしれないので、その場合は自身でも調べたりをして訂正をしておこう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。