政策

社説 逆風に立ち向かうJリート 国民の資産形成の後押しを

 金利上昇圧力が高まってきた。01年の市場開設から超低金利下で成長を続けてきたJリート市場にとっては、初めて本格的な金利上昇局面と対峙していくことが見込まれている。そうした中で少額投資非課税制度NISAの恒久化と拡充が24年度から実施されることが決まっており、Jリートが一般個人の投資需要をどこまで広げることができるか、それを市場成長の原動力にできるかが大きな焦点になるだろう。

 不動産証券化協会の杉山博孝会長は年頭あいさつの中で、「新たなNISA制度も活用しながら、Jリートの更なる浸透を図り、国民の資産形成を力強く後押しすると共に、サステナブルな社会の実現に向けて尽力していく」と抱負を述べている。協会関係者からも、「NISA恒久化を機に貯蓄から資産形成への個人投資家の動きが加速する」との期待の声が聞かれる。

 01年に2銘柄でJリート市場が開設され時価総額は当時2600億円だった。それから約20年が過ぎた21年6月末時点で62銘柄、時価総額17.5兆円に市場規模は拡大。Jリート創設10年の節目となった11年には、分配金の累計総額が1兆円に到達し、22年11時点で6兆円の規模に達している。この間、米国同時多発テロ事件や、08年のリーマンショック、11年の東日本大震災、直近でもコロナ感染症の世界的な拡大などいくつもの逆風に見舞われながらも、確実に歩みを進めてきた。

 ただジャパンリアルエステート投資法人の投資主属性別の投資口割合を例にとると、6割を金融機関が占め、法人・個人を合わせた海外が3割とプロの投資家が大半を占める。これに対して、国内の個人・その他は4%強にすぎない。多少の温度差はあるものの他のリートも投資家層はほぼ同じ傾向にある。この伸びしろの多い個人・その他の投資家層が今後のJリートの成長のカギを握っていることは明らかだ。そしてそれはいっこうに解決の糸口が見えない年金不安や将来不安を抱える国民の新たな資産形成という期待に、Jリート市場を通じて応えることにつながる。

 政治が変わり、日銀が変わる今、新たな不安材料も台頭してきている。金利上昇に加えて、異次元の金融緩和で日銀が買い入れてきたETF・Jリートの流動化が予想されることや、株式市場における高配当銘柄の台頭などだ。更にJリートのアセットの大黒柱はオフィスと住宅だが、コロナ禍を経てこれらに対する価値観が大きく変わってきていることも不安材料となる。それらのニーズの変化に、いかに柔軟性を発揮できるかも注目だ。順調に成長を続けてきたJリートが、金融正常化、金利上昇という逆風の中でもこれまでのような成長を続けることが、国民の資産形成に資する市場となるための前提条件となる。