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不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(21) ~畑中学 取引実践ポイント~ 諸経費と税金「資金計画を行う」  顧客の不安払拭に欠かせない

 不動産取引で要になるのは資金計画だ。顧客に最初から明示されているのは不動産価格だけで、かかる諸経費と税金はよく分からない。つまり、(1)総予算が見えない、(2)自身が本当に買えるのかが分かりづらいという不安を抱えている。そのため資金計画によりその不安を払拭してあげることで信頼を得ることができ、それが取引のスムーズさにつなげることができるからだ。「値段も分からないのに店で注文しようとはしないでしょう?」とは筆者が新人の頃に資金計画がよく分からず、ご迷惑をかけたお客さんから言われた言葉だが、今でも不動産取引の格言だと思っている。

 さて、資金計画のタイミングは、(1)売買の依頼時、(2)売買契約の決断時、(3)売買契約後、の3つの時期がある。また資金計画にも、諸経費や税金をA=概算でおおまかな目安を伝える、B=各項目を自身で計算してほぼこの金額がかかることを伝える、C=各項目の見積りを取得してこの金額がかかることを伝える、この3つの方法となる。

 一般的に売買する不動産が決まっていない(1)の売買の依頼時はAの概算で対応、売買する不動産が出てきた(2)の売買契約の決断時はBのしっかりとした資金計算を、不動産の契約が終わったときは資料に基づき(3)の各項目の見積もりを取得して正確な資金計画を立てることが多い。ただ、可能であれば仮の条件で(1)のときにB、(2)のときは早めに資料を取得して見積もりを取りCとしたほうが、顧客も話がより具体的になるのでイメージがつかみやすい。より売買に前向きになるだろう。

 そこで課題になるのが資金計画の算出だ。Aの概算なら売買価格の5~7%が税金を含む諸経費となる。仲介手数料が3%で残り2~4%が融資事務手数料や所有権移転登記費用等、不動産取得税等となる。だからローンを組む場合はパーセンテージが高く、現金なら低い、居住用の購入なら軽減措置があるので低く、そうでないなら高くなると考えておこう。

 Bの資金計算では所有権移転登記費用等、不動産取得税の計算ができないと難しい。そのため不動産の評価額の資料(固定資産税納付通知書もしくは評価証明書)か、想定評価額で行うことになる。所有権移転登記費用は大きく(1)土地建物の登録免許税、(2)抵当権設定登録免許税、(3)司法書士報酬の3つからなる。(1)は軽減措置があるので土地は評価額の1.5%、建物は適用要件があるが居住用なら評価額の0.3%、(2)は同じく適用要件があるが居住用で融資額の0.1%、(3)は懇意の司法書士の報酬額を当てはめておけばよいだろう。不動産取得税も適用要件次第だが、居住用なら軽減措置で建物は0円近く、土地は評価額の1.5%(3%×1-2)となるが、軽減措置で控除があるので0円近くなる。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。