総合

酒場遺産 ▶4 東京・北千住西口「天七」「徳多和良」 昭和の空気に惹かれる

 北千住西口にはディープな酒場が多い。北千住駅前は近年開発が進み近代的な街に変わったが、狭い道に踏み入ると昭和の空気を漂わせる酒場が無数にある。昭和酒場好きには堪らない街だ。

 西口を降り左側の商店街に入るとすぐ「今日も串カツで一杯  立呑処 天七」の看板と暖簾が掛かる。大阪でよく見かけるスタイルの串カツ専門店で創業1975年、もうすぐ半世紀が経つ。暖簾をくぐると小学校の教室くらいの空間の真ん中に厨房があり、強面の男たちが真剣な表情で串を揚げる。厨房を囲む長いカウンターは、満席時には50人以上の客が、黙々と酒を飲み串カツを食す。ほとんどが男の一人客で、会話はほぼなくサッと飲んでサッと出ていく。串カツは2本単位、牛カツ、豚カツ、レバカツ、ハムカツなど一串170円と、若どり、アジ、レンコンなど190円。全30種くらいか。飲物は生ビール600円、日本酒350円。「お通し」のキャベツをソースにつけて食べる、串カツは二度づけ禁止。殺風景とも言える「戦後」の空気に堪らず惹かれる。

 大七から狭い路地を西方向に5分ほど歩くと、住宅街の中にひっそりと立呑みの名店「割烹くずし 徳多和良」がある。立呑みだが、酒も料理も洗練され天七と対照的だ。厨房奥の年配の職人が魚を捌き、若い3人が客の相手をする。料理が素晴らしく美味い。メニューは日によるが、この日(12月8日)は、そい湯引き、天然かんぱち刺し、サバ燻製干し、里芋と玉蒟蒻煮合わせ、菜の花天婦羅、牡蛎酢などが440円、黒むつ刺し、鱈白子ポン酢などが550円など。客もみな心得ていていい感じだ。人気店でいつも満席だが運がよければ入れる。(似内志朗)