売買仲介

~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(18) 確認事項は面倒くさがらずに「法務局での調査、ネットに頼りすぎない」

 法務局での調査の主な目的は「不動産の権利関係を確認する」ことだ。また、取引の際に調査をしたことの証拠書類を添付するため、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得することになる。ちなみに登記事項証明書とはPC化以降の権利関係を証明する書面、登記簿謄本はPC化前の権利関係の簿冊をコピーしたものを指す。その法務局の調査は昔と異なり、今では直接に行かずともネットだけで十分に事足りるようになった。

 調査方法で結果が変わる市区町村役場とは異なり、法務局は権利関係を確認するだけなので調査方法で結果は変わらない。そのため、わざわざ行かなくともネットで確認や取得ができればよいからだ。登記情報提供サービス(登記情報)で権利関係の確認を、登記供託オンライン申請システム(登記供託)で登記事項証明書等を取得すれば十分となった。昔よりも効率的に動けるようになった。

 ネットでの確認は(1)地番、家屋番号を取得した後に、(2)登記情報で登記全部事項と共同担保目録を有りで取得、(3)公図、地籍測量図、建物図面などの関係情報を取得、(4)隣地や前面道路は所有者事項を取得していく。なお、(1)の地番や家屋番号は所有者から登記済権利証(登記識別情報通知書)や固定資産税納付通知書で確認する。(4)の隣地情報は相互の影響の確認や境界確定の際、前面道路情報は融資の際に金融機関へ提出、市区町村役場での調査に必要だ。取得書類は印刷を行い、現地との整合性を確認し、問題がなければ登記供託で原本を取得していこう。

 ただ、次の3つの場合は法務局に足を運んだほうがいいだろう。(1)更地の売買、(2)地歴や所有者の変遷を調べるとき、(3)無地番や地番の間違いを疑われるとき、この3点だ。(1)の更地の売買ではその土地の地番上に建物の登記がないかを確認する。調査自体は登記情報でもできるが調査したという証拠書類が欲しいため、管轄の法務局で地番と一緒に「底地建物のすべて」と書き申請して、建物登記がなければ「底地に登記なし」と申請書に書かれて返されるのでそれを調査証拠書類とする。登記があればその登記事項証明書等が交付される。(2)と(3)は閉鎖された登記簿謄本や公図を確認するためだ。PC化以降なら登記情報で探れるが、それ以前のものは法務局に足を運んで閲覧や取得するしかない。また、無地番や写し間違いは閉鎖公図を持って登記官に相談したほうが早い。筆者も複数の筆がある前面道路の1つが無地番であったので、法務局で閉鎖公図を閲覧したら地番が振られていた。その場で登記官に相談をしたら職権で登記変更をしてくれて取引のスピードに乗ることができたことがある。通常はネットで十分、確認事項がある場合は面倒くさがらず法務局へ足を運ぼう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。