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ミサワホーム作尾社長インタビュー(下) 目指す企業のあり方は 必ず声が掛かる存在に ブランディングにも注力 次々世代が育つ風土を醸成

 先週に続き、ミサワホームの作尾徹也社長に、現在注力していることや、今後同社が目指すところを、今回はブランディング、組織再編や人材育成といった側面から聞いた。作尾社長は、次世代、次々世代が育つ風土醸成の必要性を改めて強調した。 (聞き手・小澤美菜子)

 ――これから、どのような会社を目指していくのか。

 「BtoBの場合、何かある時に〝ミサワホームにもひとこと声を掛けようか〟、BtoCの場合でも、家を建てるときに〝ミサワホームもちょっとのぞいてみよう〟と思われることは、とても大切なことだ。顧客がミサワホームに期待するものと、当社が持つソリューションが一致しないことには、すれ違いで終わってしまい、ファンがだんだん少なくなってしまう。今後は、評判を受け取り手の顧客に委ねるのではなく、顧客目線を意識し、〝こういうことでブランドを作っていく〟〝こういうことで価値観を共有する〟といった発信をもっときちんとすることで、ブランドイメージをハンドリングしていかなければならない」

 ――現在、脱炭素化に向けた動きが加速している。

 「カーボンニュートラルは当社にとって強みになる可能性もあり、世界で初めて『ゼロ・エネルギー住宅』を販売した当社としては、ブランドアイデンティティという意味でも、外せない。新築・リフォームにも関係するが、細かな施策を2030年に向けて展開していく中で、既存の住宅をどうカーボンニュートラルという施策に合わせて温室効果ガスを削減していくか、新たな打ち手を含め対応していく。

 事業所としての活動のほか、生産・調達、物流などサプライチェーンにも関わる。メーカーなど協力会社と連携しながら、ブランディングも含め、取り組みたい」

 ――今年度に向け、取り組んだ組織再編の概要は。

 「当社の事業は、新築請負とストック、街づくり、海外、介護の5事業だが、人もリソースも、事業内で完結しているものはひとつもない。また、商品の技術開発は建築もリフォームも同じ部署でやっている。

 調達も同様だ。総務・経理や人事総務の管理系は全事業にまたがる。それぞれの事業の柱をきちんと形づくると共に、管理系や商品技術開発、販売企画、調達・生産、建設・CS、財務も含めた経営企画といった会社を支えるバックオフィス機能も整理し、5つの事業本部に6つの機能本部を横串で通すことで、リソースの共有化などを進めた」

〝見える化〟進め

次世代の人材育成

 「人材育成も大きな課題だ。社内でいろいろな取り組みをスタートさせている。(社長が突出した)いわゆる〝鍋蓋型の組織〟では、ナンバー2が育たない。事業本部と機能本部の責任者を任命する上でも、その点を意識しており、次世代、次々世代まで見通した人材育成をやっていかなければならない。一般的には現在、人材が足りないと言われているが、離職者を少なくすると共に、やはり、リーダーシップのある人材を育てる必要がある」

 「当社は元々、バックに〝大きな木〟がある会社ではないので、〝自分が動かなければ〟と思っている社員が多い。今回の再編で5事業の責任者を決めたが、リソース別に棚卸しをすると、自分の力の足りているところや足りないところが見え、みんな黙っていても勉強する。100%なんでもかんでもこなせる人はいない。社長も、全知全能ではない。何が欠落しているのかを見えるようにすることで、自分の欠けたピースを周囲に求めるようになり、それが必然的に次世代の人間を〝創る〟。そうして紡いでいけば、時間はかかるだろうが、次世代、次々世代は育つはずだ」