マンション・開発・経営 決算

12月期大手不動産2社の中間業績 年内は好調続く 通期過去最高更新を見込む

 22年12月期大手不動産企業2社(東京建物、ヒューリック)の中間連結業績はいずれも増収増益だった。業績予想に対して計画通りの進ちょくで、年内はオフィス賃貸、分譲マンションがけん引し、業績は過去最高水準となる見通し。コロナの影響が大きかった商業施設は、国内需要を取り込み回復基調にある。一方、インバウンドの回復が遅れており、ホテル事業は当初見通しよりも苦戦。年内の回復は厳しい見通しだ。

 第2四半期の業績は、東京建物が分譲マンションや投資家向け物件売却による売上高、粗利益の増加に加え、ビル賃貸が堅調に推移したことや海外事業の持分法投資利益により増収増益。ヒューリックは、賃貸・管理等収益が期ずれ要因で一時的な減益となり、営業利益が減少した以外は、増収増益となった。

 マンション事業に関して、東京建物が第2四半期末で粗利率が36.7%と20%台だった過去数年と比較して高くなった。原価率の改善や価格上昇など複数の要因が重なった結果としている。マンションの購買層に変化はなく、共働きで世帯年収が1000万円を超える層が主要顧客。都心だけでなく、郊外で生活利便性が高い物件に需要が集まっている。一部で物件価格上昇に歯止めがかかり、金利動向に注視が必要だが、「今の水準であれば(主要顧客が)ついてこられる水準」(東京建物)とみている。

 オフィスの空室率や賃料水準は、低い空室率と高水準の賃料を維持。東京建物で空室率2.9%、1坪当たり平均賃料3万896円と3万円台を維持。ヒューリックは都心5区の空室率0.7%、賃料2万8712円で市場平均を上回り推移している。

 特に、ヒューリックは開発・建替事業に注力しており、4月に就任した前田隆也社長は、来年2月公表予定の次期中期計画で「開発が一つの柱になる」と述べた。

 東京建物は、新規オフィスの空室率・賃料水準が大きく悪化する可能性は低いとみる。一方、既存大型オフィスの空室を埋めるのに時間がかかっており、東京建物では、多様な働き方へのテナントニーズに対応する提案を強化する方針を示した。

 商業施設はコロナの影響が和らぎ、国内需要を中心に回復基調にある。ヒューリックは、高級商業地である銀座・有楽町エリアに37物件を保有。「ラグジュアリーブランドとの付き合いがあり、様々な引き合いが来ている」(ヒューリック)と言う。また、既存商業施設の改修などで価値最大化を図り、「コロナが落ち着けば、売り上げも更に伸びる」(同)としている。

 東京建物によると、仲介事業については、好調な不動産取引市場を背景に引き続き堅調に推移。ヒューリックは、観光ビジネスについて、高級旅館は高稼働を維持して堅調であるものの、回復は想定よりも緩やかとしている。本格的な回復は来年6月くらいとの見通しを示した。

 事業環境における懸念点として、建設費高騰とエネルギーコストについて「(建設費上昇については)大幅な上昇にはなっていない」(ヒューリック)、「今期については(影響は)限定的」(東京建物)とみている。金利動向の注視は必要だが、調達やキャップレートなど足元では大きな影響はないとする。

東京建物

決 算 22年12月第2四半期

営業収益 2,150億円 (32.3%)

営業利益 482億円 (59.1%)

経常利益 501億円 (78.2%)

当期利益 353億円 (75.0%)

予 想 22年12月

営業収益 3,550億円 (4.3%)

営業利益 615億円 (4.6%)

経常利益 615億円 (32.9%)

当期利益 415億円 (18.7%)

 

ヒューリック

決 算 22年12月第2四半期

売上高 2,474億円 (12.4%)

営業利益 570億円 (△2.7%)

経常利益 574億円 (1.6%)

当期利益 369億円 (2.9%)

予 想 22年12月

売上高 --億円 (--%)

営業利益 1,230億円 (7.4%)

経常利益 1,150億円 (4.9%)

当期利益 750億円 (7.8%)