政策

国交省 〝まちづくりDX〟ビジョン明示 都市政策の変革目指す

 オープンデータ化がまちづくりを変える――。インターネットやIoT、デジタルツイン技術等の活用により、従来のまちづくりの仕組みそのものの変革を目指す「まちづくりDX」。その実現に向けたビジョンのバージョン1が完成した。国土交通省が7月7日に開いた有識者会議で委員から承認を得て、とりまとめられた。今後、同省ホームページに公開される。

 都市政策を取り巻く潮流の変化は目覚ましい。様々な人々のライフスタイルや価値観を包摂し、多様な選択肢や価値観を創出・提供するプラットフォームとしての役割に大きな変革が求められている。同ビジョンは、岸田内閣が掲げる「デジタル田園都市国家構想」に通底し、今年4月に同省に設置された検討会では産官学の有識者が4回にわたる集中的な議論を展開。中長期的な視点から、既存の仕組みを変革するまちづくりDXの方向性を示した。ビジョンの実現に向けた基本原則や重点政策、ロードマップも盛り込まれた。

 同ビジョンでは、豊かな生活、多様な暮らし方・働き方を支える「人間中心のまちづくり」の実現に向けて、これまでの都市政策を包含するまちづくりの具体的な3つの共通目的として、(1)持続可能な都市経営、(2)一人ひとりに寄り添うまち、(3)機動的で柔軟な都市設計――を定めた。更に、その実現のための政策として、「都市空間DX」「エリマネDX」「まちづくりデータの高度化・オープンデータ化」「3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化」という4つの重点取り組みテーマを推進していくこととした。また、都市政策がのっとるべき5原則として、(1)サービス・アプローチ、(2)データ駆動型、(3)地域主導、(4)官民連携、(5)オープンバイデフォルト(常に利用可能な状態)を提示した。

〝3つのコモン〟に着目

 特に、まちづくりDXの実現には、コモンズ(共有財)、コモンセンス(共通の感覚)、コモンプラクティス(実践の共有)という〝3つのコモン〟を施策のキーワードとした上で、オープンイノベーションの創出と社会実装のエコシステムを構築していく必要性を強調。国、地方公共団体、民間事業者、研究機関、市民など、各主体が果たすべき役割の道筋を示した。

 同とりまとめについて委員はおおむね高評価。「具体的なバトンが示された」とし、今後は各主体がアクションプランを作成していく段階に期待を寄せる意見が出された。また、各委員は「データは再生可能な資源」という観点からオープンであることの重要性を確認。その上で、「既存のプラットフォームの中に都市の様々なデータが流通し、誰もが当たり前にアクセスできる環境をつくること」や「実践段階で課題が出てきたときに、政策を吸い上げていくオープンな場ができるのが望ましい」などの意見が出された。

 同検討会立ち上げに関わった前都市局長の宇野善昌委員(現大臣官房長)は、「これまでの都市政策のあり方、仕事の進め方を変革するため、まちづくりDXを議論のミッションに定めた。重点施策、ロードマップを意識し、都市行政というプラットフォームの役割を受け止め、他の行政分野をつないでほしい」と期待を寄せた。