売買仲介

土地所有者 掘り起こす 個人からの相談が増加 事例も多様化 「アルゾ」1年、三井不リアル手応え

 遊休不動産の利用を模索する動きが活発になっている。2年半に及ぶ新型コロナ禍の直撃を受けた飲食・サービ事業者が廃業に追い込まれるなど商業店舗ビルは空室を抱える。病院の近くで経営していた生花店がコロナ禍により入院患者を見舞う人が少なくなったことなどを受けて店を畳み、その後に発達障害を持つ人向けの施設が入居した例もある。マンションが乱立する住宅街で飲食・サービス業を展開していたが、撤退した後にコインランドリーが相次ぎ開業するなどの例も都内では多い。建物面積が35坪の大型ランドリーが200万円ほどで建つケースもある。マンションに比べて初期費用を抑えられ、運用利回りも高いとして運営を始める個人投資家も散見される。狭小地・変形地といったアパート・マンションなどの収益物件に向かない土地や線路ガード下の遊休地をトランクルームに転用するケースもある。三協フロンティア(千葉県柏市)では、狭小地やビルなどの建物と建物との狭間、駐車場1台分の土地などにユニットハウスを組み立てて店舗や事務所、塾などに使える「モバイルスペース」サービスを提供している。

 東京など大都市で土地探しが難しくなっている中で、三井不動産リアルティでは、土地所有者の掘り起こしにフォーカスしたサービスを展開している。昨年8月に土地活用の新サービスとして「ALZO(アルゾ)」の提供を始めており、小売店、飲食店、コインランドリー、トランクルームなどの事業者約70社と提携している。これまでの取引件数は非開示とするが、「飲食店やレンタルボックス、シェア農園、テニスコート、シェアサイクリングなどの活用事例がある」という。

 土地を複数持っている人や相続で取得した人の土地活用の相談、既に三井のリパークに転用している土地オーナーなど個人からの相談が多くを占めている。最近は一般法人からも相談が増加している。

 アルゾを活用する狙いについて、同社では、「土地所有者は情報の多さ、活用事業者では当社が紹介する案件の確度が高いことが評価を受けている」と話す。案件数は東京都と神奈川県が最も多いものの、埼玉県や千葉県も万遍なく情報は来ている。案件によっては首都圏に限らない。

 アルゾ始動からおよそ1年間の運用の手応えとしては、「賃貸マンションやアパート建築、駐車場といった活用イメージしかなかった土地所有者の悩みの手助けができている」といい、土地が持つ潜在需要に気付いてもらっていると実感する。今後は関西圏など他エリアでも展開する。

 土地活用に悩む所有者の掘り起こしは不動産売買仲介の生命線だ。水面下で顧客争奪戦が繰り広げられている。