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トータルブレインのマンション最前線 坪単価100万~200万円台マーケットの変化 低金利背景に相場の下限が底上げ

 トータルブレインはこのほど、「首都圏一次取得向けマンション市場エリア分布変化」と題したレポートをまとめた。坪単価100万円台から200万円台までのマンション市場のエリア分布状況を分析している。

 2010年代前半まで、首都圏の一次取得者層向けの分譲マンションは1坪当たり価格(以下、坪単価)が100万~200万円台が主流だった。同社の調査によると、10~14年に供給された物件の年間平均は坪単価100万円台が271物件・2万1634戸、同200万円台が307物件・1万9546戸。同300万円以上が120物件・8303戸だったことと比べ、圧倒的なボリュームを占めており、市場の主流だったことが分かる。

 しかし、15年以降は坪単価200万円台以下の物件の割合が急速に縮小。20~21年には同100万円台が年間平均33物件と約95%減、戸数は同2358戸へと約90%減少し、同200万円台も物件数が同152物件と約8割減、戸数は同9237戸へとおよそ半減した。

 これらに対し、戸数ベースで見ると、同300万円台の物件の供給はおおむね横ばいで推移。同400万円台は約3倍に、同500万円以上は約8.5倍へと急増している。全体に占める割合から見ると、10年以降は同100万~200万円台が中心の市場から200万~400万円台が中心の市場へと明確に転換している。

 こうした推移を踏まえ、同社の杉原禎之副社長は「郊外の一次取得者層向けの市場は、この10年で同100万~200万円台前半・戸当たり3000万~4000万円台から、同200万円台・戸当たり4000万~5000万円台へと変化した」と説明。今後については、「現在わずかに残っている同100万円台の市場も建築費の高騰などで消滅が予想され、戸当たり3000万円までの市場は、中古マンションや建売戸建て市場が担っていくと考えられる」と語る。

実際の返済負担額が指標

 しかし、市場価格の〝底上げ〟が進む中、ここまでの期間に一次取得者層の所得は基本的に上昇していない。そこで一次取得者層の購買力を支えてきたのが、低水準な住宅ローン金利だと杉原副社長は言う。

 同社の試算によると、各時期の一般的な金利と物件価格で10~14年と22年を比較すると、借入額と毎月の返済額にほとんど差は見られなかった。実態として、戸当たり1000万円程度の価格上昇は、低金利でカバーできてきたため、市場の価格水準も同程度上昇してきたという分析だ。

 このことから、同レポートは「市場判断で重要なのは、近年の相場実績よりもエンドユーザーの返済負担額の上限値ではないか」と指摘。杉原副社長は「今後、プラス0.5%程度までの金利上昇であれば、(返済負担額は)顧客の対応可能な範囲に収まるだろう。すぐに金利が大きく上がる可能性は低く、今年度中は問題ないと思うが、来年以降は金利の上昇が見込まれるため注視が必要」と語る。

 用地や建設の費用の低下が期待できないこともあり、今後は郊外のマンション市場も同200万円台前半・戸当たり4000万円台が下限相場となっていく見込み。そうした中、購買層の判断基準が返済負担額だと考えれば、「我々も金利水準の細かな変化に、一層敏感になっていくことが求められるのでは」と杉原副社長はディベロッパーに対してアドバイスを送っている。