総合

デジタルグリッド・豊田祐介社長に聞く 進む再エネの効率的活用 価格高騰で分散型電力へ関心増

 国内における電力価格の高騰が進んでおり、物件を所有・運用する不動産事業者等にも打撃を与えている。そこで、分散型電力取引プラットフォーム(PF)事業を展開し、電力領域に詳しいデジタルグリッド(東京都港区)の豊田祐介社長に、電力高騰の背景や見通し、分散型電力取引のメリットなどについて話を聞いた。(聞き手=佐藤順真)

 豊田社長は電力高騰について、不動産業界では「電気代が2~3倍になったとしても、テナントへの直接的な転嫁は難しいはず。すると事業コストも上がり、融資に対して提示した計画を達成できないリスクが上がるだろう」として、開発や運用における悪影響を危惧する。電力の高騰が長期化、あるいは恒常化すると考えた場合には、その対策は不動産事業者にとっても重要課題となる。

6月頃には更に高騰

 豊田社長によると、国内の電力価格は21年10月頃から大幅に上昇。その背景には、日本卸電力取引所(JPEX)による同年12月の電力取引価格算定ルールの変更がある。「長期的な燃料調達価格を基準とした電力価格から、国際的な燃料需給状況の影響が直接価格に反映される制度となった」。そのため、現在の電力価格は当初想定の2倍以上の水準へと高騰している。

 それでも現在の水準は、3月に始まったウクライナ情勢の影響をまだ受けていない。豊田社長は「貿易統計価格に基づき算定される燃料費調整単価は、6月頃以降に国内の電気料金に反映される見通しだ」と述べ、対応を促す。

国内電力の調整機能として

 資源を輸入に頼っている以上、火力発電への依存にはリスクがついて回る。「そこで、消費量の一部でも再生可能エネルギー(再エネ)を利用することは、環境対応だけでなくエネルギーセキュリティの面からも注目度が高まっている」と豊田社長は説明する。

 しかし、国内で最も普及している再エネ電源の太陽光発電システム(PV)は、発電時間帯が限られ量も不安定。そこで、同社の分散型電力需給調整システム「デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)」に対しても、改めて関心が高まっている。

 元々は再エネニーズが中心だったDGPだが、火力も含む多様な電力の需給マッチングが可能な上、自社保有の施設に設置したPV電力をグループ内の他施設で利用することもできるとあって、これまで大手不動産会社やハウスメーカーなど約50社が導入。豊田社長は、「再エネの有効活用には蓄電池と調整力が必須であり、その調整機能の部分に貢献するのがDGP。現状、供給不足が市場の課題だが、マッチングや再エネ調達代行などでもニーズに応えていきたい」と方針を述べた。