中古住宅(流通)市場発展のためには、仲介を担う営業担当者の倫理観と提供するサービスの質的向上が欠かせない。住宅の売却や購入を検討しているユーザーと営業担当者とが直接出会えるようにするマッチングサイトの登場がそれを象徴している。仲介営業はどうあるべきか、その方向性を考える。
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元三井不動産リアルティ社長で、現在はアトリウム代表取締役会長の竹井英久氏は「不動産仲介業が消費者に信頼されるためには、仲介業者や担当者が依頼者からの依頼事項に対してどのような品質のサービスを提供し得たのかが分かるなんらかの指標が必要である」と述べる。
もちろんその指標作りは簡単ではないが、例えばとして同氏は、売却であれば査定価格や出し値の計算方法、実際の成約価格とのかい離率、成約までの期間などを指標化していくことを提案している。実現すると、不動産会社のブランド力や営業担当者の感じのよさなどが評価軸となっていた従来と比べ、大きな変化といえそうだ。
米国では、仲介担当者が提供するサービスの品質を保証する手段がエージェント(代理人)制度だ。エージェントは売主、買主側それぞれに代理人として付き、依頼者の利益を最大化する義務があるため、それに反する行為をした場合には損害倍賞請求される可能性があるという。
日本は訴訟社会といわれる米国とは文化が違うため、仲介業が一気にそこまでいくことは考えにくい。ただ、近年は、ユーザー(売却や購入検討者)と仲介担当者が直接出会えるようにする〝マッチングサイト〟が登場し、「エージェント制への移行か」と表現されることがある。
それは、ユーザーが、自分自身で担当してもらいたい営業担当者を選ぶというその行為が、米国のケースでいえば代理人(エージェント)と媒介契約する行為に近いと感じられるからではないだろうか。
マッチングサイト「TAQSIE(タクシエ)」を4月20日に開設する三菱地所リアルエステートサービスの磯貝徹プラットフォーム室長は、「当初は売却検討者が依頼したい担当者を選ぶためのサイトとしてスタートさせる。売主が望むのは自宅を適正価格でなるべく早期に売却したいということなので、マッチングサイトで担当者を選ぶとき、戸建て住宅なら物件があるエリアや、マンションならそのマンションでの成約実績が多い担当者を選ぶことができれば強い信頼感につながっていくのではないか」と話す。
日本における仲介業のエージェント化は、担当者に対する信頼強化という視点から進み始めたと言えそうだ。 (井川弘子)