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賃貸経営新思考 (上) 賃貸不動産経営管理士 課題は世間への周知 ~専門知識で存在感を~

 賃貸住宅はこれまで持ち家取得までの仮住まいとして捉えられがちだったが、新型コロナ流行を機に住まいの重要性が再認識され、賃貸住宅に対する社会インフラとしての期待も高まっている。折しも賃貸オーナーにとって頼れる国家資格者としての賃貸不動産経営管理士制度がスタートし、大規模修繕積立金の損金算入制度も打ち出されるなど激変する賃貸経営にスポットを当てた。今回は新たな使命を担うことになった賃貸不動産経営管理士について考える。(井川弘子)

 1月7日、国家資格となって初の賃貸不動産経営管理士試験の合格発表が行われ、1万240人が合格した。合格ラインは50問中40問正解で、合格率は31.5%だった。管理業への関心の高まりに伴い、近年は試験申し込み者が急増(グラフ)。賃貸不動産経営管理士協議会によると、この4月1日には、所定の手続きを終えた既存の有資格者と合わせ約6万人超が「国家資格としての賃貸不動産経営管理士」として輩出される見込みだ。

 若年人口の減少に伴う空室増加、高齢者や外国人の入居問題など賃貸経営を取り巻く環境が厳しくなる中、オーナーをサポートする賃貸不動産経営管理士に対する期待が高まるのは必至だ。

 同協会では早期に「管理士10万人」を目標としており、「オーナーとの接点がある税理士や会計士、金融機関担当者らも管理業の知識は必要」として、不動産業界に限らず、幅広い層に取得を促す方針だ。

 では、国家資格としては今年本格スタートする管理士制度が抱える課題とは何か。同協議会では「業務独占の資格ではないので、今はむしろ幅広い役割を担うようにしていくべきだ。また、管理業という仕事が一般的にはよく理解されていないので、その正しい理解を広めたい。オーナーに寄り添い、入居者がより快適に暮らせるように経営コンサルしていくことが当面の重要任務になる」と話す。また、「クリエイティブな仕事であることが認知されていくと、より管理士を目指す人が増える。今の試験は法的知識を問う内容が中心となっている。実務やコンサル能力を磨くことも大切なので、合格後のフォロー研修を重視し、スペシャリストとしての使命を果たせるようにしたい」という。

対等なパートナー

 多くの個人投資家から管理業務を受託している日本財託管理サービスの笠原良太氏(運営管理本部ソリューション事業部部長代理)はこう語る。「管理業への参入企業が増える今、競争力を付けるには管理の質向上しかない」。それができなければ価格競争に飲み込まれてしまうため、専門家としての知識習得が欠かせないという。現在、日本財託グループ全社員296人のうち75人(21年12月末現在)が同管理士資格を取得済み。昨夏から資格手当ての対象にするなど会社として取得を後押ししている。

 同社の管理受託物件はワンルーム(住戸単位)が中心だが、近年は一棟アパートの比率も高まっている。現在、約2万5000戸の管理戸数のうち、5000戸が一棟物件だ。資産運用の一環として所有している投資家が大半を占める。同社の管理士の一人である潮田壮也氏(運営管理本部ソリューション事業部ソリューション課課長代理)は、「オーナーからは、キャッシュフロー改善などを共に考えていく対等なパートナーとしての対応を求められる。その期待を上回る提案ができないと、『パートナーとして物足りない』と思われ、別の会社に管理がわたってしまう。そうならないためにも、管理士などの資格を持つことは知識面でも自信を持つ面でも有効」と話す。