売買仲介

高騰する中古マンション市場 東京カンテイ井出武・上席主任研究員に聞く 販売好調は前半で終了 在庫戸数じわり増加の気配

 新型コロナの流行から間もなく2年になろうとしている。収束が見えない中、首都圏の住宅価格は高水準が続いている。東京カンテイ市場調査部の井出武研究員に、中古マンションを中心としたコロナ以降の市場変化と、今後の見通しを聞いた。(聞き手・井川弘子)

  ーー新型コロナウイルスからの中古マンション市況をどのように見ているか。

 「大きく3つのフェーズに分けることができる。1つ目は20年2月~5月だ。急速な感染拡大に伴う初めての緊急事態宣言により、外出自粛などが求められ、市場はフリーズした。2つ目のフェーズは20年6月から21年5月。アフターコロナ、ポストコロナをイメージして市場が動いた時期だ。購入ニーズが強く、市場は品薄となり、価格が更に上昇した。そして3つ目のフェーズが21年6月から現在。購入ニーズが減少し、在庫増加が見られ始めた」

 ーー今年を振り返ると前半と後半でマーケットが変わったと。

 「20年6月から品不足感が強まり、優良物件が市場に出るとすぐに売れた。だが5月でその好調が終わったと思う。6月がターニングポイントと言えよう。それまでの上期は品不足が深刻だったが、この時期を境に在庫戸数が増加に転じ始めた。つまり様子見となったのだが、その理由は、実需層の手が届きにくい高価格水準となり、購入ニーズが減退したこと。加えて、デルタ株が広がったことでコロナは長期化する、終わらない、というイメージに変わったことが考えられる」

 ーー求められる住宅は変化しているのか。

 「広さが重要視されるようになった。駅近と同じ価値観で見られるようになる可能性もある。在宅勤務などで部屋数や広さを求める人が増えた。これは賃貸市場でも同様の傾向だ。マンションも60m2台後半は必要になるだろう」

 「広さが重要視されるにつれ、戸建て住宅に需要が流れている。マンション供給側は、実需層の手が届く価格帯で、かつ広さを確保するための立地選定が重要になる」

 ーー都心から郊外への住み替えは進むのか。

 「一概には言えない。ただ、都心部の優位性はなくならないだろう。生活利便性など魅力があるからだ。一方、郊外に目が向き始めたといってもどこでも需要があるというわけではない。子供の通学アクセスや生活環境を考えると、医療や商業施設などの集積性が高く利便性の担保されたエリアが選ばれるだろう」

 ーー今後の動向は。

 「ここにきてコロナの新たな変異株の流行が懸念されるようになり、現状の様子見状態が続くのではないか。12月以降に影響が大きく出る可能性もある」