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2021 賃貸不動産経営管理士試験模擬問題(6) 

問題

【問 26】 期間の定めのある賃貸借契約における保証に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはいくつあるか。

ア保証人は、更新後の賃貸借から生じる借主の債務については、別途、保証契約を更新しない限り、保証債務を負わない。

イ法人が新たに締結される賃貸借契約の保証人となる場合、極度額を定めなくても、保証契約は効力を生じる。

ウ個人が新たに締結される賃貸借契約の保証人となる場合、家賃の3カ月以上の極度額を定めなければ保証契約の効力を生じない。

エ個人が新たに締結される賃貸借契約の保証人となる場合、書面(電磁的記録を含む。)で保証契約を締結すれば、極度額の定めは口頭であっても、保証契約は効力を生じる。

1なし 2一つ 3二つ 4三つ

【問 27】 抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 抵当目的物の滅失により債務者の受けるべき金銭に対し、抵当権を行使するには抵当権者自身において金銭支払前に差し押さえなければならず、他の債権者の差押えによっては、抵当権者の権利を保全することはできない。

2 建物に抵当権を設定した場合、抵当権の効力は、抵当権設定当時に存する畳・建具及び当該建物に付加してこれと一体となった物にも及ぶ。

3 抵当権者は、原則として、賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができる。

4 抵当権は、目的不動産の賃貸により債務者が受けるべき賃料に対しても行うことができるが、そのためには、その払渡し前に差し押さえることが必要である。

【問 28】 普通建物賃貸借契約の更新及び終了に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 存続期間2年の建物賃貸借契約において、借主に正当事由がなくても、借主から30日前に予告することで解約することができるとの特約は有効である。

2 存続期間2年の建物賃貸借契約において、借主から存続期間内に解約できる旨の期間内解約条項を定めた場合で、予告期間の定めがない場合には、期間内解約の申入れと同時に終了する。

3 存続期間2年の建物賃貸借契約において、貸主が期間満了の1年前から6カ月前までの間に借主に対して更新をしない旨の通知をしなかったときは、存続期間2年の同一条件で契約を更新したものとみなされる。

4 存続期間10カ月の建物賃貸借契約を締結した場合、借主はいつでも解約の申入れをすることができ、6カ月後に契約は終了する。

【問 29】 強制執行に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

ア 強制執行をするためには、原則として、債務名義及び執行文の付与が必要であり、債務名義は債務者に到達されていなくてもよい。

イ 債務名義が公正証書以外の場合には、執行文を付与するのは裁判所書記官である。

ウ 債務名義が公証人が作成した公正証書である場合には、原本を保存している公証人が執行文を付与する。

エ 債務者の銀行預金債権について強制執行を行う場合、行うのは債権者ではなく、執行官である。

1ア、イ 2イ、ウ 3ウ、エ 4ア、エ

【問 30】 賃貸マンションの清掃方法等に関する次の記述のうち、適切でないものはいくつあるか。

ア ガラスクリーニングは、住居の「はめ殺しの窓」の内側及び外側のガラスは、入居者の責任において行うべきであるが、エントランスホールの扉のガラスは、貸主の負担において行う。

イ 外壁でのガラスクリーニングは、ゴンドラやロープにぶら下がる高所作業となるので、命綱等を準備し、安全に配慮しなければならない。また、通行人等の第三者に対する安全性についても配慮する必要がある。

ウ カーペットの染み抜きをするときは、短時間で、強い力で、こするように行うべきである。

エ 床のPタイルの洗浄後にワックスを塗布する目的は、見た目を美しくするだけでなく、床面が傷つかないように保護する目的もある。

1なし 2一つ 3二つ 4三つ

 

正解と解説

【問 26】 正 解 4

ア 誤り。期間の定めのある建物賃貸借契約を更新した場合、特段の事情がない限り、保証人は、更新後の借主の債務を保証するものと解釈されている(判例)。保証人は、保証契約の更新をする必要はない。

イ 正しい。借主の保証人は、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であるから根保証契約に該当する(民法465条の2第1項)。個人が根保証契約をする場合には、極度額を定めなければ効力を生じない(同条2項)が、法人が根保証契約を締結する場合には、極度額を定める必要はない。

ウ 誤り。個人根保証契約は、書面(電磁的記録を含む)で極度額を定めないと保証契約の効力を生じないが、極度額はいくらでもよく、特に制限はない(同条2項・3項)。

エ 誤り。個人根保証契約は、極度額を書面(電磁的記録を含む)で定めなければ効力を生じない(同条2項・3項)。

誤っているものはア、ウ、エの三つであり、正解は4である。

【問 27】 正 解 3

1 正しい。物上代位権は、判例の見解によれば、抵当権者に与えられた特権であるから、特権は、抵当権者自身が、物上代位権を行使しなければならないとしている。

2 正しい。抵当権は、抵当不動産に付加して一体となっている物にも効力を及ぼす。抵当権設定当時の従物(畳・建具)にも抵当権の効力が及ぶ(民法370条)。

3 誤りで、正解。抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない(判例)。例えば、債務者Aが、自己所有の土地にBのために抵当権を設定した後、AがCに賃貸し、CはAの承諾を得てDに転貸した場合、Bは、AのCに対する賃料債権に物上代位することができる。しかし、Bは、CのDに対する転貸賃料債権に物上代位することはできない。ただし、AとCは、実質的には同じとみなされる場合は転貸賃料債権に物上代位することができる。例えば、Aが会社であり、CがAの100%株主である場合である。

4 正しい。抵当権はその目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受け取る金銭等にも効力を及ぼす。ただし、抵当権者はその払渡し、引渡し前に差押えをしなければならない(同法372条、304条)。

【問 28】 正 解 1

1 正しく、正解。借主から解約できる旨の期間内解約条項は有効であり、借主に正当事由は不要である。

2 誤り。貸主に期間内解約をする権利を留保することの有効性については争いがあるが、借主からの期間内解約の申入れができるとする、期間内解約条項は有効である(民法618条)。予告期間を設けなかった場合には、「3カ月」を経過すると終了する(同法618条、617条1項2号)。

3 誤り。存続期間の定めのある建物賃貸借契約において、貸主が期間の満了の1年前から6カ月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる。ただし、その期間は、定めがないものとなる(借地借家法26条1項)。

4 誤り。1年未満の存続期間を定めた場合には、期間の定めがない建物賃貸借になる(同法29条1項)。期間の定めがない建物賃貸借は、借主からは正当事由がなくても、いつでも解約の申入れをすることができ、「3カ月後」に終了することになる(民法617条1項2号)。

【問 29】 正 解 2

ア 誤り。強制執行をするためには、(1)債務名義(法律的に権利を有することが公に認められる文書)、(2)執行文の付与、(3)これらの文書が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができる。債務名義の送達が必要である。債務名義が送達されていなければ、強制執行はできない。

イ 正しい。債務名義が公正証書以外の場合に執行文を付与するのは事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官であり、裁判官ではない。なお、執行文とは裁判所書記官又は公証人が強制執行してもよいことを認める書類である。

ウ 正しい。債務名義が執行証書(債務者が直ちに金銭の支払いをしなければならない旨を記載した公証人が作成する公正証書)である場合には、公正証書の原本を保存している公証人が執行文を付与する。

エ 誤り。執行官ではなく、債権者が行う。債権者(A)が債務者(B)の有する預貯金債権について行う強制執行(債権執行)は、裁判所が差押命令を発令し、銀行などの第三債務者(C)に、債務者(B)への支払禁止を命じることによって行う。債権者はその債権の取り立てを行い、裁判所に取立届を提出する。

正しいものの組み合わせはイ、ウであり、正解は2である。

【問 30】 正 解 3

ア 適切でない。ガラスクリーニングは、入居者が清掃できる外側のガラスは、入居者の責任において行うべきであるが、住居であっても、はめ殺しの窓の外側(内側は入居者負担)やエントランスホールの扉のガラスは、貸主の負担において行う。

イ 適切。外壁でのガラスクリーニングは、ゴンドラやロープにぶら下がる高所作業となるので、命綱等を準備し、安全に配慮しなければならない。命綱を用いる場合であっても、バリケード等を設置するとか誘導員を配置する等、第三者に対する安全性についても配慮する必要がある。

ウ 適切でない。カーペットの染み抜きをするときは、こするようにするとシミが広がってしまうので、周囲から包み込むように、軽く叩いて根気よくゆっくりと染み抜きをすべきである。

エ 適切。床のPタイルの洗浄後にワックスを塗布する目的は、床面をつややかに光らせ、見た目を美しくするだけでなく、床面が傷つかないように保護する目的もある。出入りの激しい場所では2度塗り3度塗りと層を厚くすることが望ましい。

 適切でないものはア、ウの二つであり、正解は3である。