資格・実務

 2021 賃貸不動産経営管理士試験模擬問題(3)

問  題

【問 11】 Aが自己所有の建物をBに賃貸した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 AB間で約定された賃料は、月8万円であったが、Bは、当該建物を第三者Cに月10万円で転貸し、転貸につきAの承諾も得た。この場合において、Aが直接Cに対し8万円を賃料として支払うよう請求したときは、Cはこれを拒むことはできる。

2 Bは、賃料2カ月分に相当する敷金をAに交付したが、Bには賃料の滞納はなかった。賃貸借契約が終了した場合、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず、Bの建物明渡しはAから敷金の返還された後に行えばよい。

3 Aは、甲建物をBに引き渡し、Bから敷金を受領した。Aが契約期間中に甲建物をCに譲渡し、所有権移転登記を経た後に、CとBとの賃貸借契約が終了した。BがCに建物の明渡しをしたときは、たとえCがAから敷金を引き継いでいなくてもCが敷金返還債務を負う。

4 AはBから敷金を受け取ったが、賃貸借契約期間中にBがAの承諾を得てDに賃借権を譲渡した場合、敷金に関する権利義務は当然にBD間に承継される。

【問 12】 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、当該賃貸住宅の維持保全を行う業務を実施する事業は、賃貸住宅管理業に該当する。

2 賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、当該賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務で、当該住宅の維持保全業務を併せて行わないものは、賃貸住宅管理業には該当しない。

3 A所有の賃貸住宅についてBを賃借人とする賃貸借契約が締結されたが、Bが当該住宅を第三者に転貸する事業を営む目的で当該賃貸借契約が締結された場合、AB間の賃貸借契約を特定賃貸借契約という。

4 賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならないが、登録は、3年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。

【問 13】 民法上の準委任の性格を有する賃貸住宅の管理受託契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア 委任者又は管理業者が後見開始の審判を受けた場合、管理受託契約は終了する。

イ 委任者又は管理業者が破産手続き開始の決定を受けた場合、管理受託契約は終了する。

ウ 管理受託契約の報酬額が平均的相場より安価である場合は、特約をしない限り、管理業者は善管注意義務を負わない。

エ 報酬支払の特約をした場合、委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったときは、管理業者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

1 一つ 2 二つ 3 三つ 4 四つ

【問 14】 サブリース住宅標準契約書(令和2年12月版国土交通省 住宅局公表)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 1カ月に満たない期間の賃料は、1カ月を31日として日割計算した額とする。

2 借主は、解約申入れの日から30日分の賃料(本契約の解約後の賃料相当額を含む。)を貸主に支払うことにより、解約申入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる。

3 要修繕箇所を発見した場合に借主が貸主に通知し、両者で修繕の必要性について協議することとしているが、紛争防止の観点から、修繕が必要である旨の通知は、書面又は電子メール等の電磁的記録によって行うことが望ましいと考えられる。

4 貸主は、借主が契約から生じる債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、借主は、本物件を明け渡すまでの間、敷金をもって当該債務の弁済に充てることを請求することができない。

【問 15】 賃貸住宅標準管理委託契約書(国土交通省土地建設産業局平成30年3月30日公表。以下、本問において「標準管理委託契約書」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 標準管理委託契約書では、委託業務を契約管理業務、清掃業務、設備管理業務、特約業務の4つに分類しているが、契約更新業務は、契約管理業務に含まれる。

2 標準管理委託契約書では、敷金の精算事務は、契約管理業務の契約終了業務に該当する。

3 依頼者も賃貸住宅管理業者も、反社会的勢力でないことの確約をしなければならないが、反社会的勢力に自己の名義を利用させ、標準管理委託契約書を締結するものでないことの確約は求められてない。

4 管理の委託を受けた賃貸住宅管理業者は、標準管理委託契約書に賃貸住宅管理業者登録番号を記載しなければならない。

 

正  解 と 解  説

【問 11】 正 解 3

1 誤り。承諾のある転貸借の場合、賃貸人Aは、Cに賃料を請求することができる。BのAに対する賃料が8万円で、CのBに対する賃料(転借料)が10万円である場合、両方を比較し少ない金額分を請求できる(民法613条1項)。Cは拒絶できない。

2 誤り。賃貸人の敷金返還と賃借人の建物明渡しは同時履行の関係に立たないとの部分は正しい。賃借人の明渡しが先であり、その後に賃貸人が、敷金を返還することになる(同法622条の2第1項1号)。

3 正しく、正解。契約終了前に、賃貸目的物が譲渡された場合には、Bの承諾がなくても、特段の事情のない限り、敷金関係はAB間からCB間に移転したものと扱われる。たとえCがAから敷金を引き継いでいなくても、契約が終了し明渡しがあれば、Cが敷金返還債務を負うことになる(判例)。その後、CがAに請求することになる。

4 誤り。適法に賃借権を譲渡したときであっても、特段の合意がない限り、敷金は移転しない(同法622条の2第1項2号)。

【問 12】 正 解 4

1 正しい。賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、当該委託に係る賃貸住宅の維持保全(住宅の居室及びその他の部分について、点検、清掃その他の維持を行い、及び必要な修繕を行うことをいう)を行う業務を実施する事業は、賃貸住宅管理業に該当する(賃貸住宅管理業法2条2項1号)。

2 正しい。賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、当該賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務で、当該住宅の維持保全業務を併せて行わないものは、賃貸住宅管理業には該当しない(同条同項2号)。金銭の管理を行う業務で、当該住宅の維持保全業務を併せて行うものを、賃貸住宅管理業という。

3 正しい。「特定賃貸借契約」とは、賃貸住宅の賃貸借契約(賃借人と賃貸人に密接な関係がある場合は除く)であって、賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結されるものをいう(同条4項)。

4 誤りで、正解。賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならないが、登録は、5年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う(同法3条1項・2項)。

【問 13】 正 解 2

ア 誤り。委任契約は、受任者が後見開始の審判を受けたときは契約は終了するが、委任者が後見開始の審判を受けても契約は終了しない(民法653条3号)。

イ 正しい。委任者又は管理業者が破産手続き開始の決定を受けた場合、契約は終了する(同条2号)。

ウ 誤り。委任契約は原則として無償契約であるが、特約により報酬支払い義務を生じさせることができる(同法648条1項)。報酬の有無を問わず受任者は善管注意義務を負う(同法644条)。

エ 正しい。本肢は改正点である。委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったときは、管理業者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる(同法648条3項1号)。ちなみに、委任者の帰責事由により履行できなくなったときは、受任者(管理業者)は、全額請求することができる。

 正しいものはイ、エの二つであり、正解は2である。

【問 14】 正 解 1

1 誤りで、正解。サブリース住宅標準契約書では、1カ月に満たない期間の賃料は、1カ月を「30日」として日割計算した額とする(サブリース住宅標準契約書4条2項)。

2 正しい。借主は、貸主に対して少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。借主は、解約申入れの日から30日分の賃料(本契約の解約後の賃料相当額を含む)を貸主に支払うことにより、解約申入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる(同11条2項)。

3 正しい。借主は、本物件内に修繕を要する箇所を発見したときは、貸主にその旨を通知し修繕の必要について協議するものとしている(同9条3項)。紛争防止の観点から、修繕が必要である旨の通知は、書面又は電子メール等の電磁的記録によって行うことが望ましいと考えられる(同9条3項(コメント))。

4 正しい。敷金は、借主の債務の担保であることから、明け渡すまでの間、貸主からは借主の債務の不履行について敷金を債務の弁済に充てることができるが、借主からは敷金を賃料、共益費その他の支払い債務の弁済に充てることを請求できないこととしている(同6条2項(コメント))。

【問 15】 正 解 3

1 正しい。標準管理委託契約書では、委託業務を契約管理業務、清掃業務、設備管理業務、特約業務の4つに分類している。契約管理業務には、賃料等の徴収業務、運営・調整業務、契約更新業務、契約終了業務がある(標準管理委託契約書別表1)。

2 正しい。標準管理委託契約書では、敷金の精算事務は、契約管理業務の契約終了業務に該当する。精算事務には、借主の負担する修繕費等の債務が敷金と相殺される場合には、精算書を作成し、管理委託契約の依頼者及び借主に報告する等がある(同別表1.4(4))。

3 誤りで、正解。依頼者も賃貸住宅管理業者も、反社会的勢力でないことの確約をしなければならない。また、反社会的勢力に自己の名義を利用させ、標準管理委託契約書を締結するものでないことの確約もしなければならない(同9条1項)。

4 正しい。標準管理委託契約書に賃貸住宅管理業者登録番号を記載しなければならない(同契約書・冒頭部分)。