「不動産女性塾」(北澤艶子塾長)の第2回オンラインサロンが5月25日、60名以上の参加者を得て開かれた。コロナ禍で対面での集会が難しくなっていることから、不動産業界でもオンラインの活用が日常化している。この日は、コロナから学ぶべきことをテーマに、副塾長の野老真理子氏(大里綜合管理会長)が「コロナウイルスから人類への手紙」と題して講演した。
野老氏はまず、こう切り出した。「今日は素晴らしいお天気でした。私たちの会社がある千葉県の大網白里市は田んぼが広がり、新緑の緑が輝き、海からのさわやかな風が吹きます。窓を大きく開けて仕事をすることができます」 「こういう所にいるとコロナをあまり心配しませんが、東京へ行くと、空気がよどんでいることが体で分かって、〝危ない〟と感じます」
東京の会員が多いサロンなので、その厳しい指摘にやや驚いたが私だけの反応だったようだ。〝超過密〟に対する危うさは、東京にいる者自身が既に鋭敏に感じ取っているということだろう。
野老氏は自社の紹介、東京とは比較にならない媒介報酬の低さ、社員と共に実践している多彩な地域活動、国が財政難の今だから企業が地域の課題を解決する大切さなどの話をしつつ、徐々に「コロナから何を学ぶべきか」という核心に踏み込んでいく。
本当の豊かさ
「コンサート、講演会などの地域活動をコロナだからといって止めようとはしませんでした。観客数を半分に減らし、人と人との距離をあけて行い、採算は別に考えました」
そういう工夫をしながら気付いたことがあるという。 「間を空けることで後ろの席からでも演奏者の顔が見える。前の人の頭を気にしないで音楽を聴くことができる。これが本当の豊かさではないか。自分の肩が隣の人に触れないかと気にしなくてもいい。これが本当に音楽を楽しむということではないか。だから、コロナが収束してもこのやり方は元に戻しません」 同様にコロナが私たちに気付かせてくれたことは多いと話す。新幹線が間引き運転されたが、返ってホッとした部分はなかったか。何かに追い立てられるようなこれまでの運行本数は本当に必要なものだったのか。
「私たちは、これまでも、
本当はこうすべきなのではと思いつつも、経済とか、誰もがやっているからとか、いろいろな言い訳をして後回しにしてきた。でも、本当にそれでいいのか。私たちがいろいろなことを後回しにしているうちに、コロナは私たちに、ここが疲弊しているよと教えてくれているのではないか」
〝気付き〟の大切さを訴え、野老氏は女性塾の仲間に呼びかける。
「自分の企業をオーバーホールしてもらいたい。目先の〝売れるから〟〝喜ばれるから〟ではなく、時代の向こうから〝ありがとう〟と言ってもらえることを実践すべきではないでしょうか」
「私たちの会社は、自分たちがやるべきと思ったことは、やってみようと決めました。そうした一つひとつの実践事例を世に知らしめる会社にしていこうと決めました」
そして最後にこう語った。「今日の話もこれで終わるのではなく、コロナから3年、5年、10年後にも自分たちが何をしてきたかを皆さんにしっかり報告できるようにしたいと思っています」。
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野老さんの素晴らしいところは、「災難を忘れない」ようにすること。千葉県にも被害が及んだ東日本大震災の時も、その瞬間から地元でボランティアを始めたが、東北には今日までの10年間にバスで300回、3000人を超える人たちを乗せて復興支援のため通い続けた。
それは野老さんがなによりも〝気付き〟を大切にし、それを責務と感じる人だからである。しかも体験から3年、5年、10年後の気付きにもこだわろうとする。常に「自分がやるべきことは何か」に気付こうとする、その澄んだ精神力に敬服する。