売買仲介

スペースリー 森田博和代表取締役に聞く クラウドソフトに「AI空間設計」 家具のCGモデル 自動配置 VRで暮らしをイメージ 特別企画

 パノラマ写真を撮影しアップロードするだけで360度VRコンテンツを手軽に制作・編集できるクラウドソフトウェア「スペースリー」の導入が不動産事業者の間で広がっている。今回、そのスペースリーの付帯システムとして、VRコンテンツ上に家具のCGモデルを自動配置し暮らしのイメージを体感できるVRシミュレーター「AI空間設計」のβ版がリリースされた。その開発の経緯と機能について、株式会社スペースリー代表取締役の森田博和氏に話を聞いた。

 ――「AI空間設計」開発の経緯について。

 「私どもは16年11月にスペースリーのサービス提供をスタートしました。当時はまだ『VR=ゲーム』というイメージを持つ方がほとんどでしたが、スタートから1年半ほど経つと、集客力や契約率を高めるためのツールとして特に不動産事業者様での導入効果が現れ始めました。そこで18年春頃から不動産分野にマーケティングをフォーカスしました。現在いただいている契約の約7割は不動産事業者様で、総発行アカウント数は約6000に上っています」

 「そんな中、20年の新型コロナウイルスの感染拡大以降、スペースリーのホームステージング機能のニーズが非常に高まりました。外出自粛などの影響でより分かりやすいオンラインサービスを求める動きが高まったことや、単なる物件としてだけではなくライフスタイルも含めた住まいの提案が求められるようになってきたことが背景にあると思います。そうした流れを受け、事業者様に対してはより効率的なサービスの提供を実現していただくため、お住まいを探すエンドユーザー様に対しては入居後の暮らしをリアルにイメージしながら生活を設計していただくため、『AI空間設計』の開発をスタートいたしました」

 ――具体的な機能は?

 「スペースリーにはもともとホームステージング機能がありましたが、VR画面上に手動で家具のCGモデルを配置する手間がありました。『AI空間設計』では、空間画像から部屋の広さ、壁や窓の位置をAIのディープラーニング技術を基に誤差1%以下の精度で計測し、自動で家具を配置できるようになっています。配置される家具のCGはいずれも各家具メーカー様が実際に販売している家具ばかりです」

 ――配置できる家具のメーカー数は?

 「KOKUYO様やカリモク様、Francfranc様など約40社の家具を配置することができます。気に入った家具があった場合にはシミュレーター上から各家具メーカー様のウェブサイトやショッピングサイトに遷移し購入することもできます」

 ――各家具メーカーとはどのように関係を構築しているのか。

 「KOKUYO様やカリモク様はもともとスペースリーにご契約いただいていたのでスムーズに交渉することができたほか、Francfranc様はルーム・コーディネート・アプリ『RoomCo』から、それ以外のメーカー様は3D住宅プレゼンCADウォークインホーム・プラスの専用インテリア部材集『room』からデータをご提供いただいています。家具メーカー様も最近はリアルの店舗だけでなくてオンラインの販売導線を強化したいという思いをお持ちなので、単なるシミュレーターとしてだけでなく消費者にアプローチする手段の一つとしてもご期待いただいています。今後は更に多くのメーカー様の家具が配置できるようにしていく予定です」

 ――エンドユーザーへはどのようにVR画像が提供されるのか。

 「事業者様からエンドユーザー様に向けてメールやLINEでVR画像のURLを送っていただくだけで簡単に共有ができます。また、QRコードを紙の資料に印刷して使っていただく方法や、事業者様のWebサイトにVR画像を埋め込んでご覧いただく方法もあります」

 ――正規版のリリースに向けた今後の展開は?

 「β版はスペースリーのご契約事業者様に向けた無料のサービスとして提供しています。既に多くの事業者様にご好評をいただいておりますが、今後様々なご意見をいただき、改善すべき箇所を洗い出しながら、効果が十分に期待できるような仕組みが整ったところで正式なプロダクトラインとして展開していきたいと考えています」

 「VRが当たり前の世の中になることを見越して事業をスタートして5年となりますが、その技術が浸透しているとはまだまだ言えない状況だと思います。この技術が当たり前に活用される世の中をどう実現していくか。その一端を担うプロダクトとして『AI空間設計』を作り上げていきたいと思っています」