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トータルブレインのマンション最前線 コンパクトマンションの市場変化 価格上昇で購買層や供給エリアが変容

 トータルブレインはこのほど、「コンパクトマンションの市場変化」と題したレポートをまとめた。首都圏(1都3県)における30~40m2台の〝コンパクトマンション〟について、近年の物件データを集計し、価格やターゲット層、供給エリア、商品企画の変遷と、今後の見通しを分析した。

 同レポートでは、「コンパクトマンション市場はこの5~6年で大きく変貌(へんぼう)した」と指摘する。価格については、リーマン・ショック後の10~12年は割安で推移した後、13年から15年にかけて株価の回復により富裕層や高所得者層の購買力が高まったことで上昇。同時にホテルや商業・オフィスビル等との用地取得競争の激化もあり、16年を境に一層高価格化が進んだ。

 15年以前は300万円台前半以下だった平均坪単価は、16年には354.5万円となり、都心部では19年から更に上昇。500万円台後半~600万円台の事例も現れており、平均では15年から20年の間に45%程度上昇した。

 そして坪単価の高騰と連動し、戸当たりの平均専有面積の縮小も進んだ。15年以前は43m2前後だった面積が16年以降は約40m2となり、直近の都心部では35m2前後が主流という状況だ。1LDK物件の面積圧縮や、1R・1Kを最多間取りとする物件の増加傾向が影響している。

 単価高騰に伴う専有面積や間取りの縮小に伴い、販売のターゲット層も変化。それまでは高収入の単身者による実需が中心だったところ、富裕層のセカンドハウスや投資、相続対策といった〝仮需〟へと購買層が拡大。19年以降の市場では、この仮需が40~60%を占めるという。

 しかし、現在の23区内では「面積圧縮と単価上昇にも限界が見られる」(同社杉原禎之副社長)様子だ。コンパクト物件の供給エリアを比較すると、15年以前は23区が87.5%を占めていたところ、16年以降は77.9%に減少。都下や埼玉、千葉、神奈川方面の主要鉄道路線沿線を中心に郊外部での供給が広がっており、同社は今後もこの傾向が続くと予測する。

 こうした市場の変化に伴い、商品企画にも変化が現れている。戸当たり価格の抑制のため専有面積等を縮小している関係で、住戸間口も縮小。使い勝手の悪い間取りが増加しているほか、収納スペースの減少や水回り設備のサイズダウン等が進んでおり、物件の魅力低下が懸念されている。

 同社は「これまでコンパクトマンション市場は順調に成長してきたが、近年の急激な価格上昇に伴い、商品企画の面でもう一工夫が必要な踊り場を迎えているかもしれない」と所見を述べている。