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家賃支援給付金 申請受付2週間で16万件超 利用「順調」も審査期間に課題か 8月14日から全対象が申請可に

 新型コロナウイルス感染症の影響により、経営状態が急激に悪化した飲食店等のテナント事業者の賃料支払いを支えるため、6月12日に成立した国の第2次補正予算に盛り込まれた「家賃支援給付金」制度。7月14日に申請受け付けを開始した同給付金は、現場にどの程度浸透しているのか。テナント側だけでなく、オーナー側の不動産事業者からも注目度の高い同制度の現況をまとめた。

 「家賃支援給付金」の給付額は、直近で実際に支払った月額賃料を基に算出。賃料の額によって給付率は異なるが、月当たり算出額の6カ月分として、法人が最大600万円、個人事業主が最大300万円を給付する。

 給付対象は、前年同月比の売上高が単月で半減、または連続する3カ月間で30%以上減少している事業者で、7月末現在は〝単月で半減〟の事業者について申請を受け付けている。〝連続する3カ月間〟は5月以降、最速で5~7月の売上高が対象となるため、8月14日に申請受け付けを始める予定だ。

 コロナ禍が拡大、深刻化して以来、政府もテナント賃料支援の必要性については重視しており、2次補正では同給付金のため2兆円という大規模な予算を計上している。また円滑な給付を目指して申請はweb受付に一本化し、申請サポート会場を全国552カ所に開設(一部は8月8日までに開設予定)。実効性の担保に努めている。

 事務局業務は、リクルートを運営主体とした民間企業6社からなる「家賃支援給付事務運営コンソーシアム」が、一般競争入札に参加した2者から採択されて実施している。申請サポート会場は同コンソーシアムのニューズベース(東京都中央区)が設置・運用しているほか、ベルシステム24(同)とTMJ(東京都新宿区)がコールセンター関係を担当。また凸版印刷が審査業務を、デロイトトーマツが審査システムの設計などをそれぞれ担っている。

制度の認知度は高水準

 中小企業庁長官官房総務課によると、申請の受け付け開始から2週間が経過した7月28日時点の申請件数は約16万3000件にのぼる。同課の担当者は「予算の枠組みの中での施策であり、申請件数などの規模について具体的な想定や目標を設けていたわけではない」としたうえで、「比較的(広く対象事業者などに)認識してもらっており、おおむね順調に利用されている」との見解を示した。

 同給付金制度の存在や概要については、政府や経済産業省、中小企業庁などによる広報活動のほか、国土交通省も7月17日に不動産業界団体を通じてオーナー側にも周知を要請。一般マスメディア等でもたびたび報道されており、苦境にあえぐ事業者らには相当程度浸透していると言えるだろう。

 また国交省の要請を受けた中の1団体である不動産協会は、「同制度の周知を図ったうえで、個々の対応は会員企業の判断に委ねている。今のところは同制度に関する意見や要望などは届いておらず様子見の段階だが、今後の状況を見て追加対応の検討などを考えたい」としている。少なくとも、現在までに制度上の大きな不備や欠陥は見当たらない様子だ。

契約確認などが難点

 しかし現状、実際に同給付金が事業者の手元に届くまでの時間は課題と言えるかもしれない。同日現在、審査が完了した申請はゼロ件。少なくとも現行の体制において、2週間以内に給付金を届けることは困難という実態がうかがえる。

 同課によると、同給付金は制度の設計上、賃貸契約や支払い実績の確認など時間を要する審査事項が多い。加えて、不動産の賃貸契約はその内容の幅が広く、また契約や支払いの証明書類も様式が一律ではないため、審査の標準化も困難だという。

 給付スピードを優先した制度ではないものの、再び拡大を見せている同感染症の影響を考えれば、審査は今後の迅速化が事業者から望まれるところだろう。

 コロナ禍によりテレワークがある程度拡大したとはいえ、店舗やオフィスといった不動産は、いまだ多くの業種・業態において事業の根幹と言える。その〝場所〟と事業の存続を後押しする同制度には、今後も必要とする事業者による活用と確実な給付、そして使い勝手の向上が期待される。