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緊急事態宣言を発令 新型コロナ感染対策 7都府県に5月6日まで

 政府は4月7日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型コロナ対策特措法)に基づく緊急事態宣言を発令した。対象は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県で、期間は同日から大型連休明けの5月6日まで。これを受けて東京都からは10日、外出や事業の自粛要請など具体的な施策が発表された。住宅・不動産各社も更なる対応に動き出している。

  安倍晋三内閣総理大臣は4月7日の会見で、新型コロナウイルスの感染者の急増により「医療現場は危機的な状況」との見解を示し、「時間の猶予はない。この状況は国民生活と国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあると判断した」と述べ、緊急事態宣言発令の理由とした。

 厚生労働省によると、同日午後6時時点の国内の感染判明者(クルーズ船やチャーター機の事例除く)は4168人、死者81人、重症者99人。感染者が急増しており、医療機関の対応能力が限界を超えて対処不能の事態を防ぐことが、同宣言の趣旨だ。

 同宣言に基づく措置の柱は、人と人の接触による感染の抑制のため、外出や各種施設の営業自粛のほか、オフィス業務などの「原則自宅」実施などの要請。「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減」(安倍総理)を目指すとしており、学校の休校措置延長やオンラインによる診療の解禁にも言及した。ただし同時に、「海外で見られるような都市封鎖を行うものでは全くなく、今後も電車やバスなどの公共交通機関は運行され、道路の封鎖も行わない」とも語っている。

 政府は国内事業者の経済活動に支障が出ることを踏まえ、緊急経済対策を実施する(2面に関連記事)。事業規模として約108兆円を計上し、納税の一時猶予や資金繰りのための融資円滑化措置、一部の個人や事業者向けの給付金制度などを設けた。

収容される土地等とは

 同特措法の定めでは、外出自粛等の要請に法的な罰則はなく、強制力もない。ただし都道府県は緊急事態措置の実施のため、民間の所有する土地や建物を使用することができるようになった(同特措法49条)。この項目に関しては罰則規定(同77条)が設けられており、強制力のある権限となっている。

 行政が強制的に土地等を使用できるのは、「臨時の医療施設の開設」という目的の場合に限られる。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室の見解によると、例えば検査を行った人の一時的な隔離施設のような目的では、「同感染症拡大抑止策の一環であっても、『医療施設』の定義から外れるため(法律上強制的には)使用できない」(同推進室担当者)という。

 なお安倍総理は同日の会見で、「今月中をめどに、政府として五輪関係施設を改修し、800人規模で軽症者を受け入れる施設を整備する」とも語っている。ここで言及された施設は、五輪開催時に全国の警察機動隊が会場警備などの際に滞在・使用する予定だった「国の所管するプレハブ小屋のような建物」(厚労省担当者)。各省庁の談話を総合すると、4月9日現在、民間所有の土地・建物を強制的に使用する具体的な見通しは立っていないようだ。

 同感染症の拡大や経済への影響は、今後の見通しが極めて不透明。情勢の変化に応じて、今後も国や地方自治体は随時判断の見直しや修正を迫られることになりそうだ。

対面営業休止、電話・ウェブに不安

 業界各社も対応に追われている。大手各社は、住宅の販売拠点の営業を一部休止する。三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、東急不動産、野村不動産、東京建物が、それぞれ5月6~8日を期限に戸建てやマンションの販売拠点での活動を休止。対面営業を控える。近鉄不動産は、リニューアルした営業拠点を4月8日に、リフォームと仲介の2つの営業拠点を4月11日にオープンしたが、営業時間をそれぞれ短縮した。

 4月に開業予定だった施設の延期も相次ぐ。住友不動産と羽田エアポート都市開発は、商業施設を柱とした大型複合開発「有明ガーデン」を5月15日に、超高級ホテルなどの複合開発「羽田エアポートガーデン」を20年夏頃にそれぞれ開業を延期した。

 いち早く影響を受けた商業施設では、テナント賃料減額交渉の動きも出ている。森ビルは、アークヒルズ、六本木ヒルズなどに入居する商業テナントの賃料に関して個別対応を協議中としている。三菱地所・サイモンは、4月16日に開業予定の「御殿場プレミアム・アウトレット」の第4期増設エリアを開業未定として延期した。(4月10日時点)

 都心部で事業を展開する投資用マンションディベロッパーも外出を減らす勤務体制へと切り替えた。営業活動について、「営業部は出社社員数を通常の3割まで減らし、出社・在宅社員ともにオンラインで実施」「電話やウェブで実施している」などの声が聞かれた。ただ、「投資家の意欲は変わらないものの、物件を実際に見に行くことができないため、そこまでうまくはいっていない状況」「外出を伴う物件内覧の希望者は少ない」と営業活動に影響が出始めている。現時点では「同業他社を含めて値下げなどの動きはない」模様だが、収束時期によっては、不動産価格への影響が懸念される。

 住宅展示場の集客イベント等を自粛中のハウスメーカー各社は、在宅勤務への切り替えを徹底し、営業現場にも影響が及んでいる。

 積水ハウスでは7都府県における営業拠点や住宅展示場の休業は行わない(4月9日時点)が、各都道府県の方針が決定次第、指示・要請に柔軟に対応する方針。顧客との相談、接客はウェブ会議や電話折衝を中心とし、来場は完全予約制の個別案内とする。

 大和ハウス工業は7都府県の住宅展示場を原則閉鎖し、アポイントのある顧客のみ案内する。積水化学工業住宅カンパニーでは、住宅展示場を閉鎖しないものの、新規顧客の勧誘はせず、商談中の顧客には対応する。旭化成ホームズは当面、7都府県の住宅展示場を閉める。アキュラホームは6都府県内(福岡除く)の本社、全営業拠点を休業する。6都府県の事業所勤務の社員は在宅勤務。営業拠点における接客や打ち合わせ等は原則停止する。

 賃貸管理業でも対応を徹底する動きが見られる。明和住販流通センターは、時差出勤やテレワークを基本とし、顧客への不要不急な訪問と来社の対応を原則中止にした。店舗営業はウェブを活用し、来店不要な体制を整えた。内覧時は現地で集合、解散を推奨。来店は事前予約とする。退去時は原則立ち会わずに敷金清算で手続きする。

 東急住宅リースは、オーナー訪問を自粛しメールや電話で対応。入居者の対応は、時差出勤や在宅勤務を拡大したため通常時より時間が掛かる可能性があるが通常業務を継続する。大東建託は、大東建託リーシング、大東建託パートナーズと共に対象の7都府県229事業所を5月6日まで閉鎖する。入退去業務など必要最低限の業務は継続するが、対象従業員約7000人は原則在宅勤務や自宅待機で、電話やHPのメールで対応する。

東京都 休業要請を発表、協力金も

 東京都の小池百合子知事は4月10日、国の緊急事態宣言を受け、会見を開き、都民に都内全域での徹底した外出自粛要請と、事業者に施設の使用停止および催物の開催の停止要請(共に5月6日まで)を行なった。

 緊急事態措置で基本的に休止を要請する施設(特措法施行令第11条に該当するもの)は、遊興施設等、床面積の合計が1000m2を超える大学・学習塾等、体育館やスポーツクラブなどの運動・遊技施設、映画館などの劇場等、床面積の合計が1000m2を超える博物館や美術館又は図書館とホテル又は旅館(集会の用に供する部分に限る)などの集会・展示施設、床面積の合計が1000m2を超える商業施設(生活必需物資の小売関係等以外の店舗、生活必需サービス以外のサービス業を営む店舗)。

 特措法によらない協力依頼を行う施設は、床面積の合計が1000m2以下の大学・学習塾等、集会・展示施設、商業施設。

 施設の種別によっては休業を要請する施設として、文教施設(大学等を除く)には原則として施設の使用停止及び 催物の開催の停止を要請し、保育所や学童クラブ等の社会福祉施設等には必要な保育等を確保した上で、適切な感染防止対策の協力要請を行う。

 医療施設や生活必需物資販売施設(スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター)など社会生活を維持する上で必要な施設には、適切な感染防止対策などの協力要請を行う。 

1事業所50万円

 中小企業や個人事業主への支援として、国による支援と併せて「感染拡大防止協力金」を創設する。都の要請や協力依頼に応じて、緊急事態措置期間中に休業などの全面的に協力する中小の事業者に支給する。支給額は、1者で1事業所の場合は50万円、2店舗以上有する事業者は100万円。支給方法は決まり次第発表する。