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ニュースが分かる! Q&A 新型コロナ、オフィス市場への影響は? 前提崩れ、オフィスの意義問われる

 後輩記者 毎日、新型コロナウイルス感染拡大の話題で持ち切りです。状況が日々変わっていくので、気が気ではないです。ホテルや商業施設以外でも、住宅・不動産への影響が少しずつ表面化していますし、先が見えない不安でいっぱいです。

 先輩記者 世界がかつて経験したことがない事態だからな。いろいろな情報が飛び交っていて、分からないことも多い。専門家でない我々ができることは、まず落ち着くことだ。

 先が見えない中でも、今まで社会で起きたことから、住宅・不動産市場に与える新型コロナの影響を考えることはできる。そして、考えられるマイナス面を受け止めて、今起きている変化の先に何があるのかを考えることが大事になる。ある程度予想できることを準備して余裕を持っておかないと、予想外のことが起きたときに対処できなくなるからね。

 後輩 具体的には、どんなことでしょうか?

 先輩 住宅・不動産は幅広いし、流動的なことも多い。今回は、つい最近まで好調だった不動産市場を支えたオフィス動向について考えてみよう。まず、オフィス市場の動向については、目に見えた数字として変化が現れるのはこれからになる。ただ、いい数字が出てこないのは容易に想像ができる。オフィス市場は、景気に左右されるからだ。景気悪化の程度は、世界的にこの状況がいつまで続くかによるが、現時点で相次いで自動車メーカーが国内工場の稼働を停止しているということを考えると、悪化は免れないだろう。景気が悪化すれば、事業の縮小や企業の倒産でオフィスの需要が縮小していく。

 また、近年は採用が好調で、人員を増やすために広いオフィスが必要だったり、良い人材を確保する目的で設備仕様のグレードが高く、一人当たりの面積を増やすために新しいオフィスへの需要が増えていた。景気と採用の前提が崩れれば、変化は避けられないだろう。少なくとも移転を予定していた企業でも計画の見直しなどがあるかもしれないね。

 後輩 変化としては、急激にテレワークの普及が進んでいますよね。在宅勤務を実施する企業が、規模を問わず増えています。

 先輩 それは今回の大きな変化の兆しだな。テレワークは以前からある働き方だったが、今回の新型コロナで一気に普及したな。

 後輩 このままテレワークが定着したら、これまでと違って広いオフィスは必要なくなるのですかね。

 先輩 そうとは言い切れない。確かにテレワークを実施して、在宅でできる仕事が思いのほか多いことが確認できたはずだ。通勤や会議をオフィスで行うことに疑問を感じる人も増えるかもしれない。一方で、会社に行くことの意義も実感しているだろう。社内でのちょっとしたコミュニケーションは、仕事をする上での情報共有やアイデアを生むのに大事と言われてきた。多くの人がこれを肌感覚として持ったと思う。オフィスに対して、快適な環境を求めるニーズは今後高まるかもしれない。

 後輩 私も在宅勤務でテレワークを経験しましたけど、集中するのが難しかったですね。逆に、家にいると長く仕事をしてしまいます。

 先輩 よく指摘される課題だな。そもそも家では、家族がいると、仕事に集中ができないという人も多いし、一人暮らしでも家で仕事をする環境を整えている人は少ないだろうしな。テレワークの定着で、自宅のそばに、自宅でもない、職場でもない場所である「サードプレイス」へのニーズが高まることが予想できる。オフィスでいうと、「サードプレイス」はコワーキングスペースやシェアオフィスになるかな。これらの需要が増えていく可能性は高い。また、住まいにも、働くことをサポートする機能を求める人が増えるかもしれない。

 14世紀のペストの流行は、ヨーロッパで農奴制が崩壊するきっかけとなった。新型コロナでも、社会の変化の兆しがほんの少し見えてくると思っているよ。もちろん、しっかりと今を生き残ることが前提だが。外に出られないストレスがたまるとは思うけど、家にこもる時間は有効に使わないとね。

 後輩 根拠のある楽観主義は、大事かもしれませんね。