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会員の開業支援要請が増加 日本シェアハウス協会 山本久雄会長に聞く 空き家活用の相談目立つ 感染症対策にも注力

 日本シェアハウス協会の山本久雄会長は現在、会員のシェアハウス新規開業支援で全国各地を回っている。空き家活用の相談が増加したことに加え、地方移住支援型や農業支援型など近年はシェアハウスの多様化が進み、高度なノウハウが求められるようになってきたことが背景にある。3月下旬からの1週間だけでも全国6都市を回った。一方で、共同生活となるシェアハウスならではの新型コロナウイルス感染症対策にも力を注ぐ。シェアハウスの現状と同感染症対策について聞いた。  (井川弘子)

 ――会員の開業支援で各地を回っているが、シェアハウス新規市場の現状は。

 「尼崎市、岡山市、大分市、唐津市、浜松市などを回ってきたが、シェアハウス開業ニーズが全国に広がり、その形態が多様化しつつある現状を肌で感じた。最近は空き家活用の相談が増えている。これは18年6月に成立した建築基準法の一部改正で、それまで中古戸建て住宅をシェアハウスに用途転用する際にネックとなっていた建築確認手続きの面積要件が緩和されたことが大きい。また地方都市への移住検討者が年々増加しており、その受け入れの前段階として、地元住民と交流できるお試し居住のシェアハウスも注目されている」

 ――日本シェアハウス協会は以前から、多世代共生型、地方移住応援型、リゾート民泊併用型など様々なコンセプトを提案してきた。それらが現実化しつつあると。

 「そうだと思う。例えば佐賀では今月、就農支援型が開業した。農業従事希望者だけでなく、料理人など農業を通じた事業で新たなチャレンジをしたい人からも入居の問い合わせをもらっている。その他、大分では廃業した老人ホームを多世代共生型シェアハウスに再生するプロジェクトが進行中。浜松市でも多世代共生型の計画が進んでいる。こちらは、家庭の事情で親と一緒に暮らすことができない子供を支援するNPO法人が、官民連携で手掛けている。社会貢献の意味でもシェアハウス事業はまだまだ伸びしろがあると考えている」

 ――ところで、今回の新型コロナウイルス感染症拡大による影響は。

 「今のところはシェアハウスでの感染報告はないのでホッとしているが、共同生活をコンセプトにしているシェアハウスだけに、その対策には万全を期す必要がある。協会としては2月初めに注意事項をアナウンスし、全会員にその徹底を強く促している。具体的にはアルコール消毒液を館内に設置し、入居者には手洗いや体温測定による体調確認を呼び掛けている」

 ――同じ共同生活でも一般家庭は必ずしも一人に1室があるとは限らないが、シェアハウスは個室が完備されている。リビングやキッチンの使用は細心の注意を払い、なるべく個室に居ることを心がければ、この危機を乗り越えることができるのでは。

 「その通りだ。共同部分の消毒を徹底することはもちろん、なるべく個室に滞在してもらうようにお願いしている。こういうときこそ入居者同士の協力と連帯感が重要になる。今後、シェアハウス業界のBCP(事業継続計画)マニュアルを作成する予定だ。これは感染症対策に特化したものではなく、地震や台風などの自然災害など様々なリスクへの対策マニュアルを目指している」

 ――国土交通省のシェアハウスへの期待も高まっているが。

 「これからも、シェアハウスが単身者の増加や超高齢社会のインフラとして求められてくることは間違いないと思う。地方都市では今後、人口減少で高齢者数も減少していくので、高齢者施設の廃業や空き家となる可能性が高く、そうした社会資源の再活用は重要な事業になるだろう」

 「今回の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で民泊やゲストハウスは稼働率が低下し、厳しい状況だ。そういったところから今、シェアハウスとして活用できないかという相談が寄せられている。在宅ワークのニーズも高まっている。地方都市に移住して仕事を続ける方法を選択する人は増えるだろう。当協会としては、大きな空き家をシェアハウスとし、コミュニティ形成を可能とするタイプを更に提案していく。シェアハウス事業は、空き家対策はもちろん、様々な可能性があると考えている。更にノウハウを積み上げて各地の事業化を応援していく」