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五輪後の住宅市場(下) 中古マンションは高値継続 コロナ長期化に懸念

 日本住宅総合センター主催の住宅・不動産セミナーで、東京カンテイ上席主任研究員の井出武氏が「オリンピックイヤー後の住宅市場の展望」をテーマに講演を行った。中古マンション市場について解説した。

流通坪単価は軒並み上昇

 中古マンションは、「築10年中古」(築年数9年超~11年未満)の統計から、中古マンションの価格は、三大都市圏と地方エリアもほぼ上がっている。いい要素といえる。

 築10年中古マンション流通坪単価では、東京23区は18年1月が295.8万円から19年12月は351.8万円に上がっている。ただ、川崎市は、19年4月(216.8万円)から同12月(184.2万円)まで下がっている。武蔵小杉など、台風で被害が出る前から下がってきていたため、台風の影響で下がったとはデータ上は捉えていない。今後、台風による影響が出てくるかは否定できない。

 首都圏の郊外エリア(千葉市、さいたま市、相模原市)も上昇。中でも千葉市は、同坪単価が18年1月の109.2万円から19年12月は148.8万円と大きく伸びている。首都圏では、下がっているデータはあまり見当たらない。懸念は、コロナウイルスの影響が長期化すると中古マンションに買い手がつかなくなり、下げが始まるのではないかとみている。

 近畿圏・中部圏の同坪単価でも、上昇傾向で下げ要素は皆無である。大阪市は、18年1月の192.3万円から19年12月は220.6万円に上昇。京都市は、18年1月の154.6万円から19年12月は192.5万円に上昇。名古屋市は、18年1月の135.2万円から19年12月は162.1万円に上昇。

 都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)の同坪単価は、18年1月の400.9万円から19年12月は516.3万円に上がっている。台風の影響は出ていないが、国土交通省の指針に従って電源設備等を2階以上にするとか、高台に立地しているかなどが今後物件の差別化につながる。防災対策が売りになってくる可能性はある。

フラット化が発生

 価格上昇でマンション市場の変化として、ここ数年築年数が古くなっても利回りが変わらない〝フラット化″が起こっている。準都心3区(中央、新宿、文京)の分譲マンション平均坪賃料と平均坪単価の築年別指数推移(16年11月~19年10月)では、坪単価と賃料がほぼイコールで推移している。これは賃料見合いで中古価格を設定したためで極めて人工的なものだ。都心3区と準都心3区では、フラット化で賃料を上げるのが難しく、中古価格の動きも鈍くなっている。

 南西6区(品川、目黒、大田、世田谷、中野、杉並)では、新築時の設定価格が高すぎるため、中古マンションは賃料見合いでその後は下がっていかないので、お買い得といえる。