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社説 減少基調の新設住宅着工 増税の影響の見極めを

 新たな年がスタートした。昨年の年明けは、10月に実施される消費増税に備えて、大型のローン減税などの増税対策が打ち出されて、期待と評価の声が業界から相次いだ。増税後となって迎えた今年は、住宅需要の落ち込みへの懸念は影を潜めた感はあるものの、一方で新設住宅着工の落ち込みが引き続いており、各業界団体トップの年頭のあいさつでは先行きを懸念する声が再び上がり始めている。

需要下支えに期待も

 住宅ローン減税の控除期間延長をはじめとして打ち出された住宅の消費増税対策は、増税前の駆け込みを抑制すると同時に、その反動減も発生させないところに主眼が置かれたが、手厚い支援策となっただけに増税後の需要の下支えになるところにも期待が高かった。そのような環境下で、新設住宅着工の減少が続いていることは黄色信号とも受け止められるサインだ。

 増税が実施された翌11月の新設住宅着工は、持ち家、貸家、分譲住宅がそろって減少した。5カ月連続の減少となり、しかも前年同月比12.7%の大幅な減少となった。二桁の減少は1年10カ月ぶりで、持ち家の着工戸数に至ってはリーマンショック直後以来の低水準だという。

 今回の消費増税対策は、8%への税率アップに前後して生じた住宅需要の駆け込みと、その後の長期にわたって続いた大幅な反動減の反省を踏まえたもので、需要の平準化を図ることが最大の目的だ。結果的に、増税前の大きな駆け込みはほぼ見受けられず、平準化が図られつつあるというのが現時点での共通した認識だろう。しかしその効果が、増税後も需要の減少を抑えることとはイコールではない。

 あるシンクタンクの専門家は、新設住宅着工が減少しているのとは対照的に、住宅流通市場で中古住宅の成約増加が続いていることを引き合いに出し、「1割の税金を負担してまで新築を取得できる世帯がどれほどいるのか。あるいは1割の負担をしてでも取得したいほど新築住宅に魅力があるのか」と指摘する。もともと消費税が課税されない個人間売買の中古住宅を選択することは、自然な成り行きだということだ。

平準化は黄色信号

 「増税により駆け込みが起こる」という当初の不安は払拭することができた。しかし「駆け込みは起こらず、需要も落ち込ませない」という平準化を図るシナリオは今崩れそうになっている。最悪のシナリオは「駆け込みもなく、需要減少が加速する」というものだ。現時点で見極めるのは時期尚早だが、業界としては徐々に明らかになってくる増税の影響を的確に見極めつつ、必要に応じた迅速な対応も考慮しておくべきではないか。