総合

大言小語 自分にできること

 昔、ある総会で、協会長の会員に向けた言葉が、今も心に残っている。高い会費を払ってまで「加盟した協会はいったい何をしてくれるのか。ではなく、自分が何をするのかが大事である」と。米国のジョン・F・ケネディの就任演説での有名なフレーズを借用したのだろう。

 ▼今年も新卒者がこの時期を過ぎて、「五月病」の発症が落ち着いたころなのかもしれない。3年で新卒者の3割が離職すると騒がれたが、自身の30年ほど前の新卒入社時を振り返ると、3割どころか、8割近くが2年ほどの間に退職していった。最近は働き方改革で、長時間労働の是正が高唱され、年次有給休暇の取得義務化も始まった。一方で、がむしゃらで疲弊した働き方も過去のものになるのか。

 ▼18年9月に経団連の中西宏明会長が「就活ルール廃止」を発表し、最近でも、「終身雇用はもう守れない」と発言して波紋を呼んだ。トヨタ自動車の豊田章男社長も、旧来の日本型雇用のシステム疲労を指摘している。金融庁では先般、指針案で年金制度の公助の限界を示し、「自助努力」を求め始めてしまう状況だ。

 ▼果たして、どのような働き方、暮らし方、生き方をしていけばいいのか。今後は外国人人材が積極的に登用され、不動産業界も例外ではない。今の日本人は、亡国の「原住民」となるのか。国に何をしてもらえるのかでなく、自身が何をするのかが問われている。だが、何ができるのか。