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社説 所有者不明土地問題 国土の保全管理は国の責任

 土地は地球の一部だが、日本では農地を除けばその所有権を原則自由に売買することができる。しかも、その所有権はきわめて強力な財産権でありながら、その所有権移転登記をするかどうかは任意である。このことが、今日の「所有者不明土地問題」を招いた根本原因といっていいだろう。ただ、通常の売買による所有権移転よりも、実は相続による取得の未登記増加が問題を深刻化させている。

 では、相続登記を義務付けることは可能だろうか。所有者(相続人)の立場からすれば、相続による所有権移転登記をしなくても自分の所有権が失われるわけではない。また、登記を申請するためには相続人全員の同意が必要だが、既に何代にもわたって未登記状態が続いている農地(全体の約2割が未登記といわれている)や山林はざらである。

 そうした場合、明治時代にまでさかのぼって何百人もの相続人を調べ上げ、現在の相続人を特定しなければならないケースも少なくない。そのような労苦を義務付けることが果たして現実的だろうか。

 十分に登記するインセンティブをもつ都市部で売買された土地の所有権移転登記とはわけが違う。仮に法律で義務付け罰金を課したとしても、その過料が10万や20万円程度だとすれば、相続人探索と登記費用のほうがそれをはるかに上回ることは間違いないだろう。

 我が国の土地制度がもはや時代環境と合わなくなってきていることは明らかである。その典型を一つ挙げれば、人口減少で使われない土地が増加してきているのに、それらの土地を所有者が国や自治体に寄付できる制度がつくられていないことだろう。公共事業目的があれば別だが、そうでないかぎり国や自治体が土地の寄付を受け付けることはない。にもかかわらず、そうした土地に対しても固定資産税は課税されている。

 今こそ国は土地の所有と管理の問題に真っ向から取り組むべきである。〝ただでもいらない〟土地の増加が必至であれば、国民がいらない土地の相続を放棄し、国や自治体に返還する制度がなければおかしい。

 そもそも、今後は登記を義務付けるとしても、その対象である相続人が誰もいないケースも続出するだろう。なぜなら、生涯独身者が増えているからである。また、一人っ子同士が結婚した場合、子供がいなければ相続人はいずれいなくなる。

 このように考えれば、〝いらない土地〟もしくは〝行き場のない土地〟の受け皿づくりは必須である。国や自治体が公共事業に使わないから引き取れないという言い訳はもはや通用しない。外国人を含め、土地の売買が原則自由であることに留意すれば、収益性うんぬんではなく、安全保障上の観点からも国土を管理・保全する最終責任は国にあるからである。