総合

大言小語 心の交流する住まい

 先日、旭化成ホームズ主催のフォーラムで講演した桜美林大学大学院老年学研究科の白澤政和教授は、「日本の介護保険は、介護される本人が中心の制度となっているが、そばにいてサポートする家族なども視野に入れることが大切」と主張した。イギリスでは既に、家族(介護者)を、本人(要介護者)と同格の重要な支援対象とする法律が整備されているという。「介護離職ゼロ」を掲げる日本にとって欠かせない視点だ。

 ▼我が国の介護保険制度は、少子高齢化や核家族化の進展といった社会構造の変化を踏まえて約20年前にスタートした。それまでの家族中心の介護から、社会・地域全体で高齢者を支える地域包括ケアシステムへの脱却を目指している。とはいえ、そこから家族の姿が消え去ったわけではない。

 ▼どんな制度も枠組みだけ作って〝魂〟入れずでは機能しない。まして介護の世界は〝ひと〟が対象。制度を設計する側に〝人間の心〟を見据えた優しさが必要だ。

 ▼要介護や要支援状態ではないが、加齢とともに心身の低下が見られる時期をフレイル期と呼ぶ。この時期に適切な支援があれば、予防や回復も可能という。今後はこの時期をどう支えるかも重要な課題になる。そのためにサポートする側と、される側の心の交流をいかに促すか。そこで重要な役割を担うのが〝住宅〟であることは言うまでもない。