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社説 住宅取得に係る消費税 これ以上、上げるべきではない

 19年10月から予定されている消費増税まで間もなくあと1年となる。これまでのところ、政府は先延ばしする意向はないようだ。延期した際に開いていた「集中点検会合」なる有識者会合も開く予定はない。

 消費増税が予定通り行われるとして危惧されるのが、駆け込み需要とその反動だ。住宅の場合、経過措置があり、19年3月末までに建築請負契約を結んでおけば、引き渡しが10月以降になっても、税率は8%のままだ。これから半年間が「駆け込み需要」の時期となる。

 前回の対策でも措置した「すまい給付金」については、既に10%となった場合の措置が規定されている。「ローン減税」については更なる拡充措置をとることを国土交通省が要望しており、概算要求や税制改正要望では、項目だけで金額は記載しない「事項要求」を行っており、幅広い対策をする用意がある。今回は住宅価格が既に高騰していることから、さほどの駆け込み需要も起きず、したがってそれなりの反動に過ぎないと見ている識者もいる。しかし、中には10%という分かりやすい表示によって、増税後の負担や痛税感が容易に見てとれるため、ある程度の駆け込み需要も起き、反動も大きくなるという見方もある。いずれにしても政府には、これまでの方策にとどまらない(例えば、不動産取得税の減免など)幅広い措置をとってほしい。

 ここで、常に論点となるものがある。そもそも住宅に消費税がなぜかけられるのか、だ。

 住宅生産団体連合会のホームページには各国の消費税比較があるが、「消費税において住宅取得に関し欧米各国では住宅政策上その扱いに配慮が見られるが、配慮されていないのは日本だけである」としていて、実際に住宅の購入はほとんどの欧米各国が非課税としている。これは、欧米では住宅を資産としており、一般消費財ではないからだ。ところが、日本では、消費税を課税し、なおかつ不動産取得税、固定資産税、登録免許税など多くの税を徴収する。「特に、欧米では不動産取得税等と付加価値税(消費税)との重複課税が避けられている」(住団連ホームページ)状況は天と地の差だ。

 例えば、一次取得者層が入手しようとするマンション(建物)価格が約3000万円とすると、税率10%で消費税分は300万円。20歳台後半から30歳台の年収が約400万円だから、消費税だけで1年分の給料が吹き飛ぶ計算になる。はたして買おうと思うか。住宅消費税はこれ以上、上げるべきではない。住宅購入は、家電や家具などの耐久消費財の需要、建築業界の雇用など様々な波及効果を持つ。抜本的な議論を政府、業界、消費者間で行い、住宅における税のあり方を構成し直す時が来ている。