政策

社説 人生100年時代の住宅双六 高齢者向け住宅づくりに柔軟性を

 住宅・不動産業界からも高齢者向け住宅事業に取り組む会社が増えてきた。シニア向け分譲マンションをはじめ、通常の分譲マンションに隣接させて一体開発したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、〝自宅と施設の間〟をコンセプトとした賃貸住宅など、住まいとしての機能に重点を置いた多様なタイプが登場している。高齢期の住まいの選択肢がようやく広がってきたともいえる。

 量の面でも、11年の高齢者住まい法改正でスタートしたサ高住の登録数は23万戸まで増えた。有料老人ホームを合わせると65万戸に達する。ただ、先進諸国の中でも最も高い高齢化率に達している我が国で、幸せな高齢期を迎えたいというニーズに応えていくためには、こうした従来型の枠組みに縛られることなく、もっと柔軟性をもたせることも必要ではないか。

 一言で高齢者向け住宅といっても求めるものは千差万別だ。これからは、様々なニーズに応える設計を可能にする規制緩和が必要だ。例えば、現在、サ高住に入居できるのは60歳以上だが、それまで自宅で一緒に暮らして介護をしてきた子供などの親族については適用除外にすることも考えたい。高齢者を入居させて、食事や家事などのサービスを提供するだけで有料老人ホームの届け出が必要になるが、もう少しハードルの低い仕組みがあってもいいと思う。

 国立社会保障・人口問題研究所の予測では、日本の総人口は減少トレンドに入っているが、65歳以上人口は42年に3935万人でピークを迎えるまで増加傾向が続く。それに伴い高齢化率も上昇を続ける。長寿化で人生が長くなり、50年後の女性の平均寿命は90歳を超えると予測されている。人生の後半になるほど健康状態やライフスタイル、資産状況などの個人差は大きくなり、当然、住まいに対する改善点や求める内容は若年世代の住宅取得時よりも多様化する。例えば、しっかりとした介護が必要な人もいれば、「今は元気だが、いつかは介護や医療が必要になるのでは」「サ高住や有料老人ホームに入るにはまだ早いが、今の自宅ではなんとなく不安」といった人たちは施設らしくない気軽に入退居できるタイプを求める。費用を年金の範囲内で賄えるタイプが増えることも重要だ。生活相談や食事サービス、医療・介護連携といった安心感はもちろんだが、人として真に求めているものは、日々、人とのつながりを感じながら生きる楽しさではないだろうか。〝施設〟ではなく〝普通の住まいで普通に暮らす〟という選択肢を本当は望んでいるのではないか。

 今は27%の高齢化率が3割、そして4割へと増えていく。いずれ総人口の4割を高齢者が占める時代が来る。想像し難い社会であるだけに、高齢者住宅の未来をもっと本気で考えるべきではないか。〝人生100年時代〟を迎えるにふさわしい革新的「住宅双六」が必要だ。