政策

社説 超売り手市場の18年新卒採用 自ら課題を見つけよう

 4月に入り、初々しい新入社員の姿が目立つようになってきた。小社が毎年行っている「主要住宅・不動産会社新卒入社状況アンケート」によると、前年度よりも採用人数を増やした企業は全体の6割となり、8年連続で過半の企業が採用実績を増やすことになった。景気回復基調が続いている経済状況を受けて就活市場は、売り手市場から「超売り手市場」へと変動している。

 今年のアンケート結果からはこれまでになかった傾向も見られた。誰もがその名を知る大手不動産会社で内定辞退が相次ぎ、予定人員を採用できなかったというのだ。そうした会社の中には、次年度の採用計画を減らすとしているところもある。「取りたい気持ちはあるが、数を確保するより質を確保したい」と自由回答で答えた会社もある。無理して数を取るより、優秀な学生を確保したい企業側の本音だろう。

 さて、就職氷河期世代の社会人から見て羨むばかりの売り手市場により就職した新入社員はどういった傾向を有しているのか。人材採用の専門家によれば、全体として大手・安定志向にあるという。もちろん、就職活動をしっかりしていることは前提としても、これまでなら入れないレベルの成績の学生でも大手に入れているため、早めに中堅企業から内定を取っておき、後はエントリーを出して大手からの誘いを待っている学生もいるという。ここ数年、ICTなどの発達により、ベンチャー志向が目立ち、起業を目指す学生も多かったが、無理するよりも「寄らば大樹の陰」の姿勢を見せているらしい。しかし、それでは残念ながら、激変している住宅・不動産業界で活躍していくには心許ないと言わざるを得ない。

 AI、IoTなどこれまでになかった発想、機器が住宅・不動産業界に入り込み、常に新しい発想が、この業界には求められている。大手志向だから、安定志向だから、新しい発想ができないと言いたいのではない。ただ、例えば住宅であれば新築偏重だった消費者の発想が、中古リノベーションへと向かうなどの幅広い志向を的確に捉えていく能力が若い人には求められる。守りの姿勢では、変わりゆくユーザーの気持ちや志向を把握することはできないだろう。これは、大手に入る新入社員だけに言えることではない。中堅や地場の会社に入る人も、これから増え続ける空き家への対処、あるいは地域のまちづくりに積極的に参加することが、自らの仕事にも反映される、そうした新たな展開をしっかりと描いているだろうか。

 ただ、社会人生活はまだ始まったばかりだ。そうした新しいビジネスに対応するための基礎体力をまずはしっかり付けよう。そして、今はまだ展望が開けなくても、自分の道は自分で切り開く、自ら課題を見つけられるような働き方を目指してもらいたい。