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社説 変化しつつある賃貸業者 提案力向上や新技術にも目を

 賃貸市場の秋商戦も終わり、春の繁忙期に向けて賃貸各社は準備に入った。

 ここ数年、横ばいと下落を繰り返していた賃貸市況もここ数カ月は持ち直し傾向にあるといえる。民間の調査によれば、取引成約件数はわずかながらも4カ月連続プラスとなった。

 また、家賃については、年2回、本社が行っている家賃調査において、マンション、アパートの全タイプでわずかではあるが上昇しており、13年9月期調査以来8期振りに上昇した。下落から横ばい傾向にあった家賃でも、このように上昇傾向を見せている。

来客数は頭打ち

 市況を見る一つのバロメーターとなる客足については、頭打ちだ。本社の家賃調査でも、例年同様という声が多かった。ただ、一つ言えることは以前とは異なり、不動産屋の店先で初めて物件を調べるという消費者はほとんどおらず、あらかじめインターネットのポータルサイトなどで、絞り込んで来店する客が多いということだ。調査した店舗でも、「客足は少なくなったが、ピンポイントに物件を指定するので、成約率は高くなり、生産性という点では上がっている」という声もあった。今後、ますますこうした状況が多くなっていくことだろう。

 調査した店舗では、この10月から本格運用が始まった「IT重説」に対応するところやVRなどを導入して、ユーザーが在宅のまま物件選びが行えるシステムを選択しているところもあった。こうした状況が更に進めば、店舗も要らなくなるだろう。現実にナーブという会社はVR無人店舗というサービスで、イオンなどの商業施設に不動産や旅行などの取り扱いができるシステムを開発している。駅前の不動産屋という、日本の街ならどこでも見られたような情景がなくなる可能性もある。

賃貸業者の行く末は

 駅前で店を構えていれば、お客が来る時代は終わりつつある。不動産事業者自身が様々なサービスを取り入れると共に、オーナーに提案し、ユーザーに魅力ある物件を作り上げ、それを安心・安全に提供していかなければならない。そうした気概が必要である。

 今回、家賃調査を行うに当たり、我々は「改正住宅セーフティネット法」について、その仕組みや必要性などがどれだけ把握されているか、不動産事業者に聞いた。すると、仕組みどころか、「改正住宅セーフティネット法」自体を知らない事業者もいて、認知度は低かった。我々は多くの不動産事業者が、法律や税制が改正されるたびに常に研鑽し、国、地方自治体、自らが加盟する組織体などが行う講習に参加し、研修している姿を見ている。ぜひ、「改正住宅セーフティネット法」についても見識を広めてほしい。