総合

社説 「新・セーフティネット」の意義 社会保障と融合する住宅政策

 近年、民間ディベロッパーが供給するサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の中に〝自立型〟を標榜するものが登場し始めた。 まだ介護を必要とする状況ではないが、自宅で一人暮らしをしているよりも安心できる、という理由で早めに高齢者住宅に入居したいと考える人たちを想定したものだ。もちろん、既に介護を要する人向けの居室(介護付き)も用意されている。

 自立型サ高住の特色は、入居者同士はもちろん、地域住民との交流の場づくりに意識を注いだ商品設計となっている点だ。また、それらの中にはまだ数(事例)は少ないが、子育て世帯が住む一般の分譲マンションと一体開発するプロジェクトも出始めている。

 分譲マンションのほうに子世帯が住んで、隣接するサ高住に一人暮らしの親を呼ぶことができれば双方が安心して暮らすことができる。

 子世帯との〝近居〟ができるのであれば、元気なうちに早めの住み替えをする動機にもなる。これからの不動産ディベロッパーにはこうした時代が求める住まいづくり、街づくりを積極的に進めてもらいたい。

 ただ、こうした大手系ディベロッパーが供給するサ高住は、最低でも毎月20万円強の経費(家賃+サービス代)が必要となるため、年金だけで生活している多くの高齢者にとっては入居が難しいという指摘もある。

 その意味では、新・住宅セーフティネット制度を活用した高齢者向けシェアハウスの登場に期待を寄せる医療・介護関係者も多い。戸建て空き家をシェアハウスに用途転換し、高齢者を入居させる住宅として登録すれば、改修費補助や家賃補助を受けることが可能になり、結果として低額での入居が可能になるからである。

 高齢者の病気や介護を予防することは、社会保障費の削減が急務の政府にとっても重要である。10月25日に施行された「新・住宅セーフティネット」制度で、国土交通省がシェアハウスも対象にしたのは、その中に高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の登場が期待できるからであろう。

 シェアハウスのような共同住宅であれば、住民同士の自然な交流が高齢者の認知症防止や体力の衰えを予防するのに効果を発揮する可能性が高い。

 超高齢社会を迎え不動産業界は今こそ、高齢者の一人暮らしを減らし、高齢者がいつまでも元気で暮らせる住まいのあり方について研究するときである。

 人口減少による国内の住宅需要縮小を背景に海外進出の動きが活発だが、それはそれで有意義ではあるが、日本が整備しなければならない住宅需要は時代の変化と共に大きく姿を変え始めていることにも留意すべきである。