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社説 改正住宅セーフティネット法 国の〝本気度〟が見えた

 改正住宅セーフティネット法案が先月、参議院で全会一致で可決成立した。今秋には施行される。様々な問題で揺れる今国会の中、自民党から共産党まで全会一致で可決するのは異例で、いかにこの法案が重要かつ喫緊の課題に立ち向かうものであるかの証左とも言える。

 今回の改正では、高齢者や子育て世代、障害者、外国人など住宅確保要配慮者、いわゆる住宅弱者に対する支援を手厚くした。要配慮者に対しては賃貸住宅オーナーが入居を嫌がる傾向が高く、日本賃貸住宅管理協会の調査では、7割近いオーナーが拒否感を持っている。そこで、要配慮者の入居を拒まない民間の空き家住宅などを都道府県に登録してもらい、要配慮者の住まいの受け入れを確保させる仕組みだ。しかも、登録してもらう住宅は空き家だから、増え続ける空き家対策にもなる。まさに一石二鳥を狙ったものだ。

 国は目標として、登録住宅を20年度末には17.5万戸にするとしている。年間で言えば5万戸相当だ。併せて、登録基準を満たすための空き家の改修(バリアフリー改修工事など)には最大100万円支援する。また、登録住宅については家賃補助も設定。国と地方自治体が2万円ずつ負担し4万円を補助する予算措置もとられた。

宅建業者の力が不可欠

 本紙は、この政策を強く支持する。これまでも、住宅セーフティネット法では要配慮者に対し、国や地方自治体が賃貸住宅を確保することなどが掲げられていたが、具体的な政策まではなかった。しかし、今回、民間空き家を活用し、改修費用を補助することでオーナーを支援するとともに、家賃補助により要配慮者も直接支援する。これにより、これまで掛け声だけだった住宅セーフティネットは、真の安全網になったといえる。 ただ、問題もある。登録住宅が果たして目算どおりに増えるかどうかという点。もう一つは、家賃補助を受けたとはいえ、低所得者が多い要配慮者が滞納した場合だ。

 前者については、国や地方自治体が広報に努めるとともに、民間側のビジネスをうまく活用する手立てを構築する必要がある。後者については、適正な家賃債務保証業者への住宅金融支援機構の保険引き受けなどが措置されているが、これだけでは不十分だ。要配慮者を支える「居住支援協議会」の積極的な取り組みが必要で、そこには、地域に根ざした宅建業者の力が不可欠だ。要配慮者に対する親身な相談やオーナーの説得など、これまで以上に宅建業者に求められることは多くなり、それを実現してこそ、住宅安全網が機能する。

 オーナーの意識改革につながる提案力ができる宅建業者の存在や地域内での異業種間の様々な取り組みがあって、安心して住み、暮らせる社会が構築される。