総合

大言小語 企業の色に染まるな

 桜の季節になると思い出すのが、中学か高校の教科書に載っていた大岡信氏の「言葉の力」。染色家の志村ふくみさんの仕事場で、きれいな桜色の糸で織った着物を見せてもらう。てっきり桜の花びらで染めたものと思ったら、実は桜の皮から取り出した色だという。あの黒いごつごつした皮から、えも言われぬ色が生み出されることに驚く。

 ▼新年度に入り、新入社員の姿がまぶしい時期になった。彼らにまず望みたいのはケネディ大統領の言葉をまねれば「会社が自分に何をしてくれるのかではなく、自分が会社に対して何ができるかを考え、実行してほしい」ということ。

 ▼今〝働き方改革〟が話題だ。まだ数は少ないが社員の兼業や副業を推奨する企業が登場している。社員が様々な経験を積むことで視野が広がりスキルもアップする。人口減少社会の今、企業は採用した社員の成長に期待を寄せている。

 ▼政府も兼業や副業を後押しする。3月末にまとめた働き方改革実行計画では「柔軟な働き方」を提唱。テレワークは子育てなどと仕事を両立させる。兼業や副業は新技術や社内ベンチャーに結びつく。

 ▼これからの時代、企業に所属していても、将来を見据え自分なりの考えを持って行動することが重要だ。主体的に成長を重ねていけば、いずれ企業に染まるのではなく、企業にえも言われぬ新しい色を生み出す人材になるだろう。