政策

社説 若者の既存住宅取得支援 魅力あるメニューを期待

 8月15日に内閣府が発表した16年4―6月期の実質国内総生産速報は前年比率0.2%とわずかながら増加した。この要因は、マイナス金利導入に伴う住宅ローン金利低下の影響で民間住宅投資が実質5.0%増加(1-3月期はマイナス0.1%)したことにある。住宅投資の刺激が経済対策として有効であることは明らかだ。

 政府は今月2日、新たな経済対策「未来への投資を実現する経済対策」を発表し、全体の事業規模として28兆円を超える大型対策を示した。ただ、事業費28兆円のうち、国と地方の支出は7.5兆円にとどまり、国債の一種である財投債の発行などにより調達した資金を財源とする財政投融資が6兆円、また17年度予算で手当する事業なども含んでいる。国が直接行うものは限定的で、民間実需の刺激で対応しているといえる。

 この中で、住宅不動産関連のメニューとして挙げられたのが、「若者による既存住宅の取得を支援する措置」だ。周知のように住宅を初めて購入する一次取得者層は若年層が多い。国土交通省が行った15年度住宅市場動向調査においても、戸建て住宅、マンション、中古などすべての住宅の種類において一次取得者は30代が最も多い。しかし、その世帯年収は少なく、新築住宅の取得は困難となっている。特に首都圏などでは、都心の高額物件は即完が相次ぐなど好調だが、一次取得者向けの3000万円前後のマンションなどはまだまだ供給が少ないのが現状だ。こうしたことを受け、建物状況調査(インスペクション)の実施と瑕疵保険への加入を促進することで、収入が比較的少ない若年層が安心・安全な既存住宅を取得し、子育てなど安心な暮らしを営んでもらおうという支援策だ。

 所得が低い若年層に照準を合わせた施策であり、特に〝中古〟住宅にさほどのアレルギーを持っていない現代の若者には有効だ。具体的なメニューはこれからだが、スマートフォンでのアプリ活用など、若い世代の視点での仕組み作りが重要になる。

 もっとも、インスペクションと瑕疵保険というと、これまで中古住宅流通市場活性化の中で行われてきた延長線上という印象もある。若年層に訴求するのであれば、住宅への税制措置見直しや一定基準を満たした世帯への住宅取得給付など、直接的なメニューの検討も必要だろう。また住宅取得だけでなく、他にも不動産投資促進策やAIなどを使ったイノベーションの支援など、進めるべき施策はある。

 今回の経済対策の要である民間の実需の掘り起こしのため、ベンチャーなど民間企業からのアイデアを採り入れるのも一案だ。様々な企業が独創的なものを発信できるのではないか。