政策

社説 高齢化進む首都圏郊外 都心にない魅力づくり急げ

 国立社保障・人口問題研究所の資料によると、首都圏の高齢化率は20年に26%、30年に29%、40年に35%、50年に39%と高まっていき、それ以降は高齢者比率がほぼ定着し、60年になっても40%と推測されている。つまり、首都圏の高齢化問題は今後何十年も続く。しかも、これらの数値は首都圏全体の平均だから、おそらく郊外では高齢化率が5割を超えるところも続出するだろう。今から有効な対策を打ち出さなければ、首都圏といえども将来は〝郊外消滅〟の危機を招く。

 なぜ、このようなことになったのか。よく指摘されることだが、大きな要因の一つが〝住宅すごろく〟が崩壊し、郊外の戸建て住宅が、若い人たちの夢のマイホームではなくなったからである。新たな若い世代の流入が途絶えれば町はオールドタウン化していく。

 このまま、郊外の衰退が進めば高齢者の家計において最も重要な資産である住宅の資産価値崩壊につながる。今でさえ、住宅価値は新築から20年も経つと建物価値がゼロになり、土地代のみと言われている。その土地価格が、人口減少が続く郊外は急落していくだろうし、空き家率が増え、町の荒廃が進めば歯止めを失う。

 郊外を再生するためにはどのような手段があるだろうか。若い世代が魅力を感じる町づくりや、都心と郊外をより迅速・快適に結びつける鉄道網の再編なども検討されるべきだろう。それ以上に可能性を探るべきは郊外ならではの新たな雇用の創出であろう。

 消費社会研究家の三浦展氏も郊外を再生するために「郊外の都市化」を提唱する。「これまでは寝て食べて遊ぶだけの場だった郊外に働く場を増やすことが重要。その働く場を住民自らが創り出すことだ」と語る。具体的には「高齢者向けのサポート事業、空き家などを含む住宅地の管理ビジネス、より文化的な事業としては住民がつくる図書館、シネコンでやらないような映画の上映」などを挙げ、豊かな可能性を示唆する。

 また、近年は最新機能を備えた大型物流施設が郊外に開発されるなど、新たな時代のニーズに即した土地利用を生み出すことができれば、そこに雇用が創出され、若い世代の流入を期待することができるだろう。

 首都圏郊外は首都東京を支える大事な後背地でもある。〝地方消滅〟とは別次元で、首都圏郊外の衰退を放置することは許されない。拡散した都市機能を集約する「コンパクトシティ」は人口密度が高い首都圏では難しいのではないか。とすれば、公共施設や住宅などのハードを中心地に集めるという発想ではなく、家事代行など住民同士の絆や交流により生まれる〝共助のビジネス〟を集積していくという発想が重要になるはずである。