政策

社説 27年路線価 上昇基調が拡大 地価の安定を豊かさに

 相続税、贈与税を算定する土地の評価額の基準となる全国の路線価がこのほど、国税庁から発表された。全国の平均値は0.4%下落となり、前年に引き続いて下落したものの、下落幅は0.3ポイント縮小した。都道府県庁所在都市の最高路線価を見ると、東京の中央区銀座5丁目銀座中央通りが1m2当たり2696万円、前年比14.2%の高い上昇率となり、30年連続で全国最高を更新した。また、上昇した都市は21都市、横ばいは14都市といずれも大きく増加し、下落したのは9都市少ない12都市にとどまり、地価の回復に全国的な広がりも見えてきた格好だ。

 ただ、路線価の上昇が特に顕著となった4大都市圏を中心とする大都市においては、今年から地価の上昇を喜んでばかりはいられない事情がある。今年1月から相続税の課税強化が行われたことで、評価額が上がることで課税される対象は広がり、課税対象者の税負担が重くなるケースがでてくるからだ。

待ちかまえる税負担

 政府が目指す通りに、先行き住宅・不動産のデフレ解消が進んでいくとするならば、一部ではその先にまた税の負担増が待ちかまえていることになる。国民が豊かになるかけがえのない手段であるはずの住宅取得、不動産取得という資産形成には、絶えずハードルがつきまとっているといっても過言ではない。

 90年代バブルの崩壊後、これまでにも幾度となく地価上昇の局面は訪れた。だが、いずれの回復期も短命に終わり、再び長い下落基調に逆戻りを繰り返してきた。長期の時間軸でとらえると、上昇している期間よりも下落している期間のほうが圧倒的に長い。資産デフレを抜本的に退治するには、地価の上昇・安定化傾向を短期に終わらせない取り組みが求められる。更には、未だに安定の兆しが見えない地方諸都市へも、地価の回復を波及させることと、地価の変動をなだらかなものにする視点も重要になってくる。

デフレ脱却のチャンス

 成熟経済の下にある今日の日本で、高度成長時代のように資産が年々増える地価上昇がもはや望めないことは誰もが認めるところだが、かといって資産が年々目減りするデフレが放置され続けていることを容認しているものもいない。生活者にとって、資産の安定もまた豊かで安心な暮らしの基盤になるからだ。長期の資産デフレから脱出できる数少ないチャンスが訪れようとしている。この好機を逃してはならない。