政策

社説 14年・都道府県地価 地方の地価安定は喫緊の課題

 14年都道府県地価調査がこのほど発表された。三大都市圏は、6年ぶりに住宅地の地価が反転し、2年続いた商業地の上昇と共に、地価上昇が鮮明になってきた。一方で、全国平均では下落幅こそ縮小したものの、住宅地は23年連続の下落。商業地も7年連続の下落となった。とりわけ回復感に乏しい地方圏は深刻だ。高額マンションが売れて、投資物件が枯渇しているという東京をはじめとする大都市とは対照的に、地方圏では今もなお多くの国民の資産である住宅・不動産のデフレが続いていることに変わりはない。このことは深刻に受け止めなければならない。

大都市偏重の地価

 大都市圏の地価上昇が常に先行するのは当然のことだが、それが郊外や地方に波及する効果に期待もしたい。しかし、07年、08年のミニバブル当時でさえ、地価が上昇したのは東京、名古屋、大阪にとどまり、地方への波及は限定的だった。今回も、三大都市圏を除けば、住宅地の地価が上昇したのは、震災復興などの事情がある宮城県、福島県と沖縄県のわずか3県にとどまる。調査地点の8割弱が下落したままだ。

 大都市圏の地価上昇は、五輪開催に伴うインフラ需要や、成長鈍化してきた新興国を避けた投資マネーが日本の不動産市場に流れ込んできたことなども背景にある。そこで懸念が高まるのが東京の一極集中の問題で、政府もこれを是正するため地方創生の省庁新設など、地方底上げに本腰を入れ始めている。

 そうした中で、今回の地価調査ではいくつかの明るい材料もあった。15年に北陸新幹線延伸開通を控えた北陸・金沢は、商業地が全国一位の上昇率を記録。その影響から住宅地もほぼ横ばい圏内にまで回復を見せた。

 人口が増加している沖縄・那覇市は、ベッドタウンの住宅需要に加えて、沖縄県都市モノレールの延伸が決まった新駅効果も加わり、前年より上昇率が更に拡大した。このほか札幌市、広島市、茨城・つくば市、富山市などでも地価の上昇、回復傾向がうかがえる。いずれも公共交通のインフラ整備や再開発が進展しているという共通点がある。

 消費税再増税や〝東京五輪後〟といった課題を抱える中長期の視点からは、今回の地価の回復が一過性で終わる可能性も否定できない。その先の経済成長を持続的なものにしていくことが何よりも重要であり、それには地方の回復、特に経済基盤となる土地価格の安定なしには実現は難しい。回復の兆しは未だ点でしかないが、これが線で結ばれ、面的な広がりがでてくることで、地方の自律的な回復へとつながるはずだ。政官民が協調して、地方の回復、安定に全力で取り組まなければならない。