政策

社説 中古住宅の価値 参考価格に統一を

 価格査定マニュアルの改訂作業が始まりつつある。なかでも中古住宅の流通活性化のためにも、建物の価値を再評価した価格を仲介の際に表示しようというのが大きなポイントだ。

 現在、一般的に木造一戸建ては築20年を超えると、建物の価値はゼロとして取引されている。そのことを、一般の消費者はそれほど承知していない。一方、売主のほうは、手をかけてきた建物の価値を少しでも評価してもらいたいので、いくばくかの価値があると思いこんでいるのだが、いざ売り出しの段になって、初めて価値ゼロと聞かされるのが実態だろう。

 そこで考えられているのは、相場である「市場価格」とは別に、経済的残存耐用年数やリフォームの履歴などから、建物を再評価して算出した金額を「参考価格」として、新たに提示する方法だ。参考価格では、建物と土地のそれぞれにおいて価格が表示されるので、これまでの土地建物一体としたものより分かりやすい。

二重表示は混乱招く

 問題なのは、市場価格と参考価格という2つの価格をともに表示しようとしていることにある。これでは参考とはいえ二重価格表示になり、消費者は混乱する。時間の経過に伴って、価格が収斂されていくといった見方もあろう。しかし、それまでの時間、やはり市場は混乱する。

 ここは価格を一本に絞り、表示すべきである。そして中古住宅の価値を正当に評価しようというミッションを受けている以上、表示する価格は、これまでの市場価格ではなく、建物価値を評価した参考価格で表示すべきだろう。もっとも参考価格という表現がいいのかどうかは検討する必要がある。

 中古住宅の流通活性化は、本来の建物価格を評価することなしに達成できない。資産評価額の損失は国全体で500兆円と試算されており、住宅の評価を変えることは、資産デフレから脱却するための砦でもあるのだ。

 リフォームをした価値を斟酌しないのは理屈に合わない。それでありながら、これまで新築後の経過年数だけで、建物の価値をみてこなかったのは、行政も含め不動産業界の怠慢とも言えよう。

価値向上は業界の発展

 建物が再評価されることによって、中古住宅の販売価格は上がる。だからと言って購入者の立場からの批判は当たらない。なぜなら売主にとっては不当に低く評価されていたものが正されるし、買い手は将来、売主にもなるのだから。

 戦後、住宅が不足していた頃に比べると、今や日本の住宅は大きく進化している。耐久性や快適性など比較にならないほど向上した。建物に対する新しい価値評価は当然の帰結だ。土地の価値を、自ら上げることは難しいが、建物は住む人が手を入れることで価値を上げることができる。ベースの見直しは、不動産業界に大いに貢献するだろう。