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大言小語 居酒屋に想う

 職業に貴賎のへだてはないが、誰だって、やりがいが手に取るように感じられ、時には笑顔が飛び交うような楽しい仕事に就きたいと思う。そうした理想の職業の一つが、居酒屋である。 

 ▼5時にのれんを出すと、待っていたかのように常連がひとり、ふたりとやってくる。6時を回る頃には、常連の一人が会社の同僚と来て、店の自慢を始めていたりする。

 ▼店は大きくないほうがいい。店主が目配りできる範囲のカウンターとテーブル席が少しあればいい。7時を過ぎると、店内はほぼ満席。そこからは、せっかくやってきても入れずに帰る客と、タイミングよく席が空く幸運な客とが交互に顔を出す。まさに、人生の不条理を垣間見ることができる。

 ▼居酒屋は人生そのものだ。気に入った店なら毎日でも通い、店主が心を込めて作った料理と、好みの酒がマッチした日には、それだけで幸せだと感じてしまう。9時ともなれば、ほろ酔い加減の常連が、我が家に帰ってきたかのような笑顔で席に着く。

 ▼これほど、やりがいのある仕事はめったにない。それなのに時折、何の覇気も感じない、しらけた店に出くわすことがある。自分の仕事と世の中の接点をしっかり見つめていれば、そんな事にはなり得ないはずなのに。

 ▼言うまでもないが、常に色々な顧客と接し、喜びや夢を与えることができ、人生の相談にも乗ることができる不動産業は、理想の職業の一つである。