政策

社説 シェアハウスの普及を 時代が求める共生型住宅

 中古住宅を活用してシェアハウスを供給している業界は昨年9月、国土交通省が特定行政庁に対し「貸しルーム」は「寄宿舎」に該当するとの通知を行って以降、事実上、事業は足踏み状態となっている。

UR方式はOK

 ただ、同省はこのほど、UR都市機構が実施している「ハウスシェア」方式であれば寄宿舎には該当しないため、用途変更の届け出は不要との認識を示したことから、新たな展開が見え始めた。

 例えば、一般社団法人の日本シェアハウス協会(山本久雄代表理事)は、「ルームシェアリング」という名称で新たなルームシェア事業に取り組む検討を始めた。制度の詳細は今後詰めるが、UR方式に準じた契約形態を前提に、家賃の支払い方法や入居者の募集方法などを定め、会員社に提案していく。

 心無い一部事業者による劣悪なシェアハウスが、「脱法ハウス」として一般紙に報じられたことなどから、今回の〝寄宿舎規制〟になってしまったわけだが、健全なシェアハウスは、時代ニーズにマッチした「共生・交流型住まい」として普及途上にあることは間違いない。

 事実、中堅ディベロッパーや大手ハウスメーカーは、新築賃貸住宅の一形態として既に本格参入を始めている。企業の研修所や社員寮などを大幅にリノベーションするケースもある。大がかりなリノベーションや新築であれば最初から寄宿舎としての用途申請がなされているため問題はない。

 問題は既存のマンションや一戸建て住宅を活用する場合だが、寄宿舎としての用途変更をするためには、建築基準法や自治体の条例によって厳しい安全規制がかけられることになるため、普及の足かせとなりかねない。

空き家解消にも貢献

 特に、住宅政策上も重要視されるようになってきた中古住宅市場の活性化や、空き家戸建ての活用促進という観点からは、シェアハウスへの用途転換は望ましいことではないだろうか。

 シェアハウスは、当初は若者世代による利用が一般的であったが、次第に様々なタイプの物件が登場するようになってきた。山登りなどアウトドア生活を趣味にしている人たちが集まるものや、外国人と同居して英会話を学ぶものなども現れている。また、子育て世帯を応援するシェアハウス、高齢者と若い世代との共助を目的にした多世代型など多様である。

 まさに少子高齢化対策や、働く独身女性を応援するという今日的な重要政策として「住まい」を積極的に活用することで、問題解決の一助にもなる。

 国土交通省もこれからの住宅政策としては、シェアハウスの整備と供給促進を検討する可能性を否定していない。ぜひ、具体的で前向きな取り組みを始めてもらいたい。