政策

社説 20年の東京五輪開催に思う 地方の不動産市場活性化を

 念願だったオリンピック・パラリンピック20年大会の東京開催が9月に決定した。前回開かれた1964(昭和39)年以来、実に56年ぶりとなる2度目のオリンピックとなる。国内は東京招致成功の歓迎ムードに包まれた。招致に積極姿勢を見せていた安倍政権は、昨年末から矢継ぎ早に経済政策を打ち出し、それまで低迷が続いていた日本経済を円安、株高へと導いて一定の経済効果も出始めた。そこに東京五輪招致が実り、アベノミクスにも追い風となった格好だ。

 東京湾岸部を中心にコンパクトな大会運営が基本構想に掲げられている20年の東京五輪だが、インフラ整備などをはじめとする経済波及効果は東京都などの試算によれば約3兆円規模とされる。広義の民間投資を含めれば、それを大きく上回る経済効果も期待されている。不動産市場においても、早くも五輪効果が出始めている。東日本大震災直後は一時期、水を打ったように静まり返っていた東京湾岸部のマンション市場が急回復し、今や販売好調に転じた。

経済波及は限定的

 一方、経済の回復の芽が出てきた効果を東京だけにとどまらせることなく、地方圏に広げることも重要な課題だ。日本不動産研究所がこのほど、不動産会社、金融機関、機関投資家など124社を対象にアンケートした不動産投資家調査をまとめた。それによると、五輪誘致を受けた今後のオフィス、住宅、ホテルなどの不動産需要の拡大は会場周辺地区か東京都心に限られるとの見通しが根強いことが分かった。首都圏全体、地方中核都市への不動産需要拡大には否定的な見方が大勢を占めた。

 更には、高度成長時代に開かれた前回の東京五輪が日本経済全体に大きな恩恵をもたらしてくれたのに対し、成熟経済下で開かれる20年の五輪の経済波及は限定的との指摘もある。経済波及が限定的にとどまるようであれば、オリンピック終了後には日本が再び長期の縮小経済に陥り、都市と地方の格差が今以上に広がることも懸念される。

持続的、安定成長へ

 持続的かつ安定的な経済成長には、地方経済の浮揚が欠かせない。そのためには、太陽光発電などのエネルギー関連のインフラ整備と、減反政策見直しをはじめとする第一次産業の大規模経営・合理化がカギを握っていると見る。共に地方圏における不動産の価値向上につながる可能性を秘めているからだ。東京の復調と共に地方圏の不動産市場を活性化に導けるか、残された期間は7年。五輪開催は、東京はもとより日本全体を世界の人に見てもらうチャンスでもある。各分野で20年を1つの目標として、展開してもらいたい。