政策

社説 「ワンストップサービス」に思う 仲介業者本来の責務とは何か

 宅建業者を中心とした関連事業者間の連携により、消費者が安心して中古住宅を取引するための枠組みづくり(商品としてのワンストップサービスなど)が、注目を集めている。

 例えば、建物に瑕疵がないかを建物検査(インスペクション)会社に依頼する。結果はOKであっても、万一のことを考え瑕疵保険に加入する。

 更にはシロアリの点検や地盤調査を依頼する。あるいは契約して購入する前にリフォームのことについて詳しく知りたいとか、購入価格自体が適正かどうか不安を抱く需要者もいるだろう。

 人生最大の買い物、売り物となるだけに、心配し出したらきりがなくなる。そこで、様々な不安を一気に解消する「ワンストップサービス」という商品を、国土交通省の政策的後押しもあり、全国中小の宅建業者が検討を始めた。

負担はどうあるべきか

 課題はいくつかある。まず、諸々の調査や保険に必要なコストは売主・買主のどちらが負担するのか。それらは仲介手数料に純粋に上乗せされるのか。あるいは仲介業者も一部を負担すべきなのか。

 多彩な調査内容の中からどれを選択するかは消費者の自己判断または自己責任か。あるいは仲介業者が専門家として的確なアドバイスをすることもワンストップサービスに含まれているのか。いずれにしても、仲介業者の果たすべき責務が、従来以上に重くなりつつあることは確かである。

 ワンストップサービスとは、取引に伴うリスク解消のための個別業務が消費者に明示され、各専門家がフィーを徴収してその責務を担うということである。では、そのワンストップサービスというシステムの中で、仲介業者の役割とは何か。単にワンストップ商品を紹介・提供する窓口業務なのか。

関連業者との関係

 従来からの仲介業務自体が中古住宅取引に伴うリスクや不安を解消するという役割を担っているはずである。とすればそのことと、仲介業務が果たしていたリスク回避の仕事を専門分野ごとに〝分解〟したワンストップサービスとは、どう関係しているのか。

 よく言われることだが、インターネットの普及によって物件情報を持っているだけでは仲介業者の存在意義は急速に薄れつつある。代わって求められているのがコンサルティング機能だとも言われている。「関連事業者間の連携」というキーワードは、「仲介業者本来の責務は何か」という厳しい問いを、自らに投げかけるものでもある。